「おっさんレンタル」日記

先日「レンタルお姉さん」という本を書評したのだが、そのあとに書店を物色してみたら本書を見つけてしまった。しかし今回は「おっさん」。本当に需要があるのかどうか疑わしいと思ったら、意外にもいろいろな依頼が飛び込んでおり、なおかい依頼を遂行している道中でいろいろな人との出会いがあり、なおかつアドバイスを送ったり、受けたりすることがあったという。その「おっさんレンタル」とはいったいどのような存在なのか、そして「おっさんレンタル」をやっている中でどのような出会い・別れ・体験を行ってきたのか、そのことについて取り上げている。

第1章「「おっさんレンタル」、スタート!」
「おっさんレンタル」というサービスの流れは、

1.僕をレンタルしたい人が、ホームページから注文する
2.メールなどで、会う日時などをやりとりする
3.実際に依頼人に会って、「レンタル内容」をこなす
4.1時間が過ぎた段階で終了(延長も可)
(上記p.4より)

とある。中でも「3.」にある「レンタル内容」が本書の肝となるところであり、様々な「内容」が入っている。本章では最初の依頼として「おっさんに話を聞いてもらう」という依頼から「釣り堀同行」という話について取り上げている。

第2章「困った依頼をかいくぐれ!!」
依頼の「内容」によっては本当の意味で「困ったようなもの」まであり、それについてかいくぐった日々について綴っている。具体的に「困った依頼」とは何かというと、「誕生日のサプライズゲスト」や「アイドル志望女子の悩みを聞く」、さらには「ナンパ代行」などがあったという。コツコツと内容をこなしていくうちに噂が瞬く間に広がり、TV出演もすることができたという。

第3章「「最近の若者は」なんて、悩む彼らに言えない」
「おっさんレンタル」を続けていくうちにだんだんと依頼をしている方々の共通点を見出すようになってきた。「おっさんレンタル」というと「便利屋」のように見えてくるのだが、実際のところ、依頼をしている方々の共通点として「話を聞いてほしい」「かまってほしい」という悩みがとても多いと著者は実感していた。
私自身も現在の日本の現状を描いた本を読んだり、当ブログで取り上げたりしていたのだが、コミュニケーションの機会が薄くなってきており、他人との距離もだんだん遠くなってしまい、話をする相手が少なくなってしまったために、「おっさんレンタル」や先日取り上げた「レンタルお姉さん」を介して話相手を欲していたのかもしれない。
本章では自信の持てない人、人生を楽しめない人、生真面目すぎる人との付き合いについて綴っている。

第4章「家族をつくる 家族と生きる」
第3章までは話を聞いてもらうというようなものが多かったのだが、本章ではそこから外れて生き別れの息子との出会い、夢をかなえる、厳し現実に立ち向かう姉妹を励ますというような話について綴っている。

第5章「いま、「新しい人生」を生き始める」
2年以上続いている「おっさんレンタル」。その仕事の中で著者はどのような事があったのかを回顧するとともに、依頼人たちがくれたもの、お金のもらう意味、相手に向き合う意味、他世代との懸け橋などについて綴っている。
そもそも著者が「おっさんレンタル」を始めた理由はいったい何なのだろうか。調べてみると、

「イメージの悪いおっさんでも、自分のために働いてくれるとなったら、少しは見直してもらえるんじゃないか。
要は、「おっさんのいいところ、見せたろ!」という見栄が、「おっさんレンタル」のそもそもの始まりだったのです」(p.27より)

とある。おっさんに対する若い世代の冷たい視線を見返すという目的で思い付き、始めたのが、意外にも若者をはじめ多くの世代に受け入れられ、2年以上も続いている。今となっては「レンタル彼氏」など様々な「レンタル」ビジネスにて発展しているのだが、そもそもそれも著者は想像もつかなかったのかもしれない。とはいえどひょんな思い付きから始まったビジネスなのだが、第3章にも書いた通り、いま生きる現状を打破してくれる役割の一つとして今もなお成り立っているといえる。