アフリカ―資本主義最後のフロンティア

アフリカと言えばいまだに「発展途上国」の印象が強いのだが、最近になってだんだんと成長の兆しが見えはじめて行った。その象徴として5年前の2010年に南アフリカにてサッカーワールドカップが開かれたのが印象的である。会場設営や治安など課題はあったのだが、ワールドカップが開催されたことにより経済成長を象徴づけたと良いといえるのだが、他にもアフリカ大陸の国々でも目覚ましき成長が存在するという。本書はその成長をし続けている国々について取り上げられているが、その反面、成長はおろか破たんしている国もあるという。

第一章「携帯電話を駆使するマサイ族―ケニア、ウガンダ」
今もなお伝統的な慣習を踏襲し続けるマサイ族であるが、そのマサイ族にも「変化」があったという。その一つの要素として「携帯電話」がある。本章ではその携帯電話はいかにしてマサイ族のみならずアフリカ中に伝わり、広がっていったのか、そしてアフリカ大陸内でどのような「携帯電話戦争」が起こっているのかについて取り上げているとともに、携帯電話以外で起こった変化について取り上げている。

第二章「「悲劇の国」が「奇跡の国」に―ルワンダ」
ルワンダが「悲劇の国」と呼ばれた所以は1994年の「ルワンダ大虐殺」による民族対立があった。100日間で80万人以上の人が犠牲になったことが世界中に報道され、そう名づけられた。しかしその「悲劇の国」から「奇跡の国」に成長した要因には、その虐殺の際に国外へ退避し、そこで学びや成長を遂げルワンダに戻る、いわゆる「ディアスポラ」の存在があったからである。しかも本書で取り上げるディアスポラの一人には日本人の師匠がいたのだという。

第三章「中国企業アフリカ進出最前線―エチオピア、ザンビア」
先進国はアフリカに対する関心はあったものの、日本ではどうなのかというと森喜朗内閣時代に初めてアフリカに外遊するまでは見向きもしなかった。しかし日本が本腰を挙げてアフリカに外交関係を築いていってからは日本のみならず世界中がアフリカに対すて熱視線を向けた。特に中国は積極的に技術提供などをアフリカに対して行ってきたのだが、その中でもエチオピアとザンビアにおける現状について取り上げている。

第四章「地下資源はアフリカを幸福にするのか―タンザニア、ボツワナ」
大量に技術提供をしたり企業をアフリカ大陸に誘致したりしている大きな理由としてアフリカには地下資源をはじめとした天然資源が豊富にあるとされているのだが、それらを持っているアフリカは果たして「幸福」を手に入れられるのか、そのことについて取り上げている。

第五章「経済が破綻した国の日常―ジンバブエ」
経済的な急成長を遂げている陰で経済が破たんしてしまった国もある。その国の名はジンバブエである。ジンバブエがいかにして経済破綻をしてしまったのか、そして破綻した後のくにはどうなっているのか、著者はそこについても取材を行っている。

第六章「「格差」を経済成長のドライブにする国―南アフリカ」
最後は最初に書いた2010年にサッカーワールドカップが行われた南アフリカ共和国だが経済的に成長を遂げていったその一方で、経済にまつわる「格差」について取り上げている。

アフリカ大陸はまだ経済成長に関する可能性がたくさんあり、なおかつ先進国も大きな関心事になっている。しかしその陰にはどのような変化が生じたのか、そして日本はどのような対応を行うべきか、それを考える参考になる一冊といえる。