下着の社会心理学 洋服の下のファッション感覚

下着は外から見えないのだが、その下着ですらファッションのごとくこだわる女性も多い。そのこだわりがランジェリー専門店という女性下着の専門店などができるようになり、「個性的」「高級感」などを求めやすくなった。

そもそも下着にこだわることは「心理的効果」「社会的目線」「身体意識」に変化があると著者は指摘しているのだが、果たしてその実態と変化とは何か、本書は20代~70代女性まで、1万人もの女性の調査をもとに明らかにしている。

<下着と心理的効果>
第1章「こだわりの実態」
そもそも下着の歴史は洋装が日本に伝来した明治初期に入ってからであるが、伝来した当初はブラジャーすら存在しなかった。ブラジャーが生まれたのは第一次世界大戦のころであり、その時には始めて庶民も洋装を切るようになった。職業としても洋装が広がりを見せるようになり、そのことも相まって女性の社会進出もしてきていた。ただ当時の下着はあくまで洋装の「脇役」でしかなかった。

第2章「下着の心理的効果」
戦後になってワコールなど下着メーカーが次々と誕生し、女性は下着にもこだわるようになった。それからというもの高度経済成長期も相まって下着産業は成長していった。
話しは変わって、本章では「下着を着る」ことによる「心理」だが、女性でも「勝負下着」なるものがある。これは「やる気を起こす」のもあれば「パートナーとの思いを引き上げる」「女性としての魅力を引き出す」というようなものがある。ほかにも下着によってはリラックス感を出したり、安心感を与えたりするような効果があるという。

<下着と社会的目線>
第3章「男性目線の下で」
下着は女性の心理を映し出すこともあるのだが、ほかにも男性から見ても魅力的になるようにアピールをするような効果がある。特に後者の場合は合コンなど男性と一緒にいる時に効果をもたらす。では男性目線から魅力的に見られるような下着を選ぶ・こだわる傾向は特に20代~30代の女性に多いという。

第4章「見せる下着の登場」
下着は時代とともに進化をし続けてきており、最近では「見せる下着」なるものができた。いつごろかというと90年代後半なのだという。どうして生まれたのかというと「セクシーさ」を訴える傾向が強くなり、肌見せファッションが出てき始めたことが背景としてある。

第5章「肌見せと羞恥心」
その肌見せは10代後半~20代を中心に行われるようになったのだが、上の世代から見たら「羞恥心はないのか?」という声も出てくる。しかし肌見せファッションは90年代後半から始まったことではなく、60年代に隆盛した「ミニスカート」、70年代に誕生した「シースルーファッション」が出てきていることを考えると、肌見せファッションの歴史は深い。しかし肌見せファッションの歴史は深いからと言って「羞恥心」は薄れていったのかというと、そうではない。羞恥心が出るぎりぎりの中で露出をしている。

第6章「なぜ、肌見せファッションなのか」

「肌見せはいやらしいファッションではない。あくまで、暑い季節のオシャレなのだ。だから、恥ずかしがる必要はない」(p.134より)

これは肌見せファッションを着ている方々の考え方である。暑い季節で、肌を見せないようなファッションだと熱中症にかかってしまう。そこで肌を見せながらも自分自身をアピールするという意味合いで「肌見せ」を行っているのだという。

<下着と身体意識>
第7章「ボディへのこだわり」
下着にも種類によってグラマラスに見えることができれば、モデルのようにスレンダーに見えることもできる。そういったボディにまつわるこだわりを持つことができるのも下着の役割として担っている。また「補正下着」と呼ばれる自分の体型を補正するという下着まで存在する。自分自身のボディにこだわり・理想があるからでこそ、それに限りなく近づける下着も生まれ、着用されている。

第8章「エイジングと下着」
女性に限らず、男性も歳をとるにつれて体型が維持できなくなり、たるんでしまう。そこで「アンチエイジング」の役割を担う下着も存在するようになった。主にどの世代が着るのかというと40代以上の世代で、「若くありたい」と願う方々が多い。

女性は老若問わず下着にまつわるこだわりを持つのだが、男性はどうなのかというと、女性ほどこだわってはいないものの、それでもこだわりを見せ始めている。しかしその下着への「こだわり」は時代とともに変化しているのだが、その下着の変化と、こだわり・嗜好の変化がどのようなものであるのか、それについて知ることができる一冊といえる。