拳に聞け!

スポーツ小説を読むとなぜか血湧き肉躍るような感覚になる。それがボクシングやプロレスであればなおさらのことである。本書はその中でもボクシングの物語である。

本書の舞台はとある大阪のボクシングジム。そのボクシングジムは立ち退きに迫られているらしく、便利屋の主人公は金儲けのためにボクシングをはじめ、立ち退きを迫られているボクシングジムに通い詰めることになる。しかしとある若者に出会ってから主人公の出会いにより、ボクシングにのめり込むことになる。

このことを見るとその便利屋がプロボクサーになるのかと思ったのだが、実際はボクシングのトレーナーの仕事を手伝うというものである。ちなみにのめり込んだきっかけの若者は、主人公が手伝うことになったジムの会長の息子であるという。また主人公は、手伝う前まではボクシングについては門外漢だったという。

その門外漢であっても練習生を増やし、会長たちとともに徹底して鍛え上げた。そして教え子が試合に出たときも熱心にサポートしている姿があった。

本書を描くに際し、著者はいくつものボクシングジムに足を運ぶ取材を行ってきただけに、ジムでのトレーニングはもちろんのこと、試合の臨場感やトレーナーとのやりとりなどが事細かに描かれており、試合を見ている感覚がそのまま文章でも感じることができる。

ボクシング好きな人もさることながら、ボクシングについて知らない方でも感覚で楽しむことができる一冊である。