なぜ、あの店は生ビールが120円でも儲かるのか?

株式会社オトバンク 上田様より献本御礼。
ここ最近は居酒屋に行くことが少なくなったのだが、仕事で外に出るときは居酒屋を通ることが度々ある。そのなかで閉店してしまうような居酒屋もけっこう見かけるようになった。好景気になってきているのだが、それが故なのかどうかはわからないものの、居酒屋業界も厳しい状況に立たされている。その状況の中で新しい発想もあれば、経営そのものを見直し、合理化などを行うことによって生き残っている居酒屋もある。

本書は女子大生コンサルタントが業績不振の居酒屋を立て直すというストーリーをもとに解き明かしている。ちなみにビジネス書の中でも「ビジネス小説」と呼ばれる一冊といえる。

Mission1「どうしても目標売り上げを達成できない店を救え~月商を2割アップさせる方法~」
主人公は女子大生でコンサルタントとあるが、実際は「コンサルタント見習い」と呼ばれ、父の背中で育ち、実際に父の会社に入社するための条件としてコンサルタントとして経営を立て直すことを課せられた。いわゆる「入社試験」というようなものである。しかも立て直しは「コンサルタント」としてではなく、「アルバイト」として働きながら、アルバイトの立場から提案をしたり、意見をしたりするような形で立て直しを行うというものである。
本章の話に入るのだが、売上を上げるため、そして目標の売上を達成するためにどうしたらよいのか、本章では「組織風土」や「選択食数分析」の観点から提示している。

Mission2「繁盛しているのに利益が出ない店を救え~原価と人件費を下げる方法~」
繁盛しているお店はたくさんある一方で、肝心の利益が出ないお店もある。利益を出さなければ、従業員の給与を払うことができず、チェーン店の場合はロイヤリティが払えないというようなこともあり得る。
本章では売上を伸ばすというよりも利益を確保するために「経費削減」と呼ばれる原価・人件費削減を取り上げている。もっとも本書のタイトルであるようなことをかなえる場合、この利益をねん出するのが大きなカギであるため、原価や人件費をどうするのかが重要となってくる。

Mission3「経営体制の変更で凋落した伝説の繁盛店を復活させよ~スタッフの心を一つにまとめる方法~」
居酒屋の現場で最も重要視されるのがスピードである。もちろん正確性もあるのだが、体制の変更をすると、今までの行っていたオペレーションが変更され、遅れる可能性がある。そのオペレーションが遅れることは、居酒屋はもちろん多くの飲食店では「命取り」になってしまう。
本章ではそのオペレーションを回復させるためのマニュアル化や社員教育をどうしたらよいのかについて伝授している。

Mission4「頑固な職人を意識改革して瀬戸際の老舗居酒屋を救え~現状を分析し、人間関係を円滑にする方法~」
店を改善するにも「組織」や「チーム」が一体になる必要がある。もちろん組織にいる人々の価値観や性格は人それぞれであり、中には「職人」と呼ばれる頑固で昔気質な人もいる。人それぞれだからでこそ変え方も個人差があり、なおかつその変え方を利用し、組織を一体にする必要がある。そのうえで「現状分析」と「改善」を繰り返し、店を成長していく必要がある。

Mission5「リニューアルに失敗した店を立て直せ~新規オープンを成功させる方法~」
本書のタイトルである「なぜ、あの店は生ビールが120円でも儲かるのか?」について、そのからくりが出てくるのが本章である。よくある店では500円、缶ビールだと200~300円かかる。実際にやってしまったら当然赤字となってしまう。しかしそれでもなぜ利益が出るのかというと、「他で補っている」ところにある。
そのことを取り上げて思い出したのだが、2010年あたりに、東京の大山でとある居酒屋が焼酎を無料で提供するサービスで開店し、ワイドショーなどで大きく話題となったことがある。その時の利益のメカニズムと大きく似ている。

Mission6「繁盛している店を多店舗展開せよ~業務拡大を成功させる方法~」
居酒屋にはチェーン店など多店舗で展開しているところも少なくない。しかしなぜ多店舗で展開しているのか、そこには明確な理由があるという。もちろん共通した理由もあれば、チェーン展開している店それぞれの理由が存在する。そのうえで多店舗展開をしていくために様々な観点での「満足」をさせること、そして何よりも他人に任せる勇気を持つ大切さについて伝授している。

本書はいろいろな観点から実践しやすくできている。実際に居酒屋を経営している方、居酒屋の従業員として働いている方、これから飲食店を開業したい方など、様々な立場から得るもの、実践できるものが異なってくる。