日本の治安

「日本の治安は悪化の一途をたどっている」と言ってしまえばそれまでなのだが、その治安は具体的にどのような現状があるのだろうか、本書は現状と抑止策について取り上げている。

第一章「子どもを守れるか」
子どもを守るために「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(通称:児童ポルノ法)」があり、今年の7月15日に単純所持禁止となったのだが、現状では子どもの保護につながるような状況になっていない。私の住んでいる鎌倉でも、近辺でほぼ毎日のように不審者の情報が出ている。本章でも「1日10人の被害者」とあるように、少なくとも毎日のように子どもを脅かすような事件が起こっている。

第二章「女性を守れるか」
女性を脅かされるような事件は今も昔もある。どういったものかというと強制わいせつもあれば、ストーカー、痴漢もある。しかもその事件の多くはメディアでは報道されない。報道されない事件で有名なものとしてペッパーランチ事件がある。もちろんそれぞれに対して規制法などの罰則付きの法律を制定したり、強化したりしたものの、それでもなお事件は続発している。

第三章「社会の変容から考える」
社会の変容があるとするならばコミュニティの変化が挙げられる。以前であれば地域で防犯を行ったり、子供のしつけをしたりするなど地域で密着したものとなったのだが、時代が変わり地域間が疎遠となってしまった。その疎遠により「孤立」ができてしまい、その「孤立」を和らげようと犯罪に展開することがある。代表例でいえば孤独老人の万引き事件が挙げられる。

第四章「歪んだ自由のかたち」
日本国憲法では様々な「自由」が担保されているのだが、その解釈によって「歪み」が生じている。もちろん自由の度合いによっては「公序良俗」に抵触し、犯罪になり得るのだが、それすら分別できない、あるいは間違った解釈をすることによって犯罪の温床ができてしまっているという。

第五章「刑事司法の壁」
刑事司法により、量刑を測ることだったのだが、その測る要素として「証拠」の有無や有力性がある。ほかにも仮釈放や刑法39条など様々な抜け穴や「壁」が存在するという。

第六章「少年犯罪への立ち遅れ」
少年犯罪は悪化の一途をたどっているという論者もいるのだが、総数的には今も昔も変わっていない。もっとも以前は「尊属殺」と呼ばれる親殺しの罪があり、適用された事例もあるという。
しかし少年犯罪というと「少年法」が挙げられるのだが、その法律改正の変遷はもちろんのこと、少年、そして被害者たちの接し方について取り上げている。

第七章「ネット犯罪への無策」
ネット犯罪というと、児童ポルノや名誉棄損がある。名誉棄損といえば昨年取り上げた「突然、僕は殺人犯にされた~ネット中傷被害を受けた10年間」という本で取り上げているのでここで割愛するが、その本で出てきた内容もまた「ネット犯罪への無策」の一つといえる。

第八章「インフラから犯罪抑止を」
では、犯罪を抑止するためにはどうしたらよいのか、本章では道路や公園、学校といったインフラの面でどのような対策を行ったのかを提言している。

「世界的に見ても日本は治安が良い」と言われているのだが、完全になくなったわけではなく、むしろ多様化の一途をたどり、法の抜け穴を突いた犯罪もある。日本の治安の問題点を見出し、治安をよくするためにどうしたらよいのか、その参考材料となる一冊である。