ホウレンソウ禁止で1日7時間15分しか働かないから仕事が面白くなる

「ホウレンソウ」と言えば、社会人として必要な「報告」「連絡」「相談」の事であり、決して野菜のことを言っているのではない。このことは社会人になる以前からたたき込まれており、社会人になってからでも「当たり前」に扱われる。

しかし本書で取り上げる企業は、それとは正反対に「禁止」しているという。禁止したこともあるのだが、他にも要因が重なったことにより、顧客を感動させ、稼ぐことができ、そして何よりも仕事が面白くなるのだという。本書の著者はそれを体現させたのだが、それをなしていく上で非常に重要な要素が1つあるという。本書はその要素を基軸に伝授している。

第1章「限られた時間で最大の効果を上げるコツ」
時間は誰しも平等に24時間ある。しかしその中で仕事ができる時間も限られている。あまりにも時間をかけすぎてしまうとプライベートや休む時間も脅かしてしまい、結局の所仕事がはかどるどころか、逆に体を壊してしまい、プライベートもめちゃくちゃになってしまい、ひいては仕事でも成果が上げられなくなってしまう。
それを打破するために著者の会社では「ムダ」を徹底的に排除している。それがものでも会議などでもである。
また仕事にしても「マンネリ」を打破するような工夫も行っている。また会社としても売上を上げるために営業を行う必要があるのだが、その営業トークに工夫を行い、成果を上げている。

第2章「上司ががんばりすぎるから部下が育たない」
子供は親の背中を見て育つように、部下もまた上司の背中を見て育つ。そのため上司の一挙手一投足によって部下が働きやすい環境になるし、逆に毎日終電まで残業をするような環境になってしまう。
本章では社長をはじめとした「上司」の立場から部下が頑張るためにどうしたらよいのか、上司の行動から任せることに至るまで伝授している。

第3章「お客さんを感動させられるから仕事は面白い」
もしもあなたが「仕事が面白い」時があったとするならば、それはどのような時か。もちろんそれはある方もいれば方もいるのは致し方がない。
特に後者の方々に対して、感動させることができるのかと言ったら、社員に対しても、本章のタイトルのようにお客さんに対してもあるのだという。感動させられてしまうと、感動してしまった方は満足するし、何よりも実行した社員が「感動させることができた」という満足感・快感を得ることができる。本章ではその方法を「社員」「お客さん」それぞれの方法を採り上げている。

第4章「管理しないほうが人は働く―上司の仕事は、部下の不満をできるだけ消すこと」
課長や部長など部署を束ねる長は、「管理職」と言われている。そういったポストに就いている方々は果たして管理をするだけの立場なのか。著者はむしろそういったポストの方々は管理をせずに部下の不満を解消することに努めろという。
ちなみに本書のタイトルの根幹は本章に集約されており、実際に見聞き・体験した出来事から、「ホウレンソウ禁止」と掲げており、徹底しているという。しかも本章では著者がなぜ「管理をしない」ことを徹底しているのかについて、実際に管理をしたがる管理職たちのエピソードを余すところなく書かれている。著者曰く、

「幸いにも、私はこうして本を書く機会があるから、こうやって文字に残して、管理職になるべきじゃないのに、なってしまった本人が二度と同じヘマをやらかさないように、戒めることができる」(p.144より)

という。ある種自戒でもあり、自分の会社への訓示といえるのかもしれない。

第5章「差別化は「人マネ+アルファ」で誰でもできる」
ものにしても売り方・ノウハウにしても「差別化」は良く出てくる。しかしその「差別化」というのは果たして難しいのかというと、思った以上にシンプルである。既存にあるものに「アルファ」というアイデアやオリジナリティを付け加えることで十分に「差別化」できるという。ちなみに「アルファ」は全く異なる要素でも、自分自身の知っている要素でも良い。

第6章「管理するコストはバカにならない」
そもそも「管理」は本当に必要なのかというと、著者曰く必要が無く、むしろ様々な所において「コストのムダ」なのだという。そもそも社員一人一人の管理をすること自体「マイナス思考」が産んだものであり、なおかつそれが横行してしまっては、企業そのものがマイナス思考の塊になってしまうのだという。

ユニークな方針を打ち出し、会社内のみならず、業界内、さらには日本のビジネスにおいて大きく旋風を巻き起こした著者だが、昨年の7月に多臓器不全のため逝去した。著者の遺した企業、そして思想は本書をはじめ多くの著書を通じて、我々に語り継がれている。常識を常に打ち破り、考え、新しいもの・ことを生み出していった姿は今もなお残っている。