江戸「粋」の系譜

「粋」という言葉は「いき」と読む人もいれば、「すい」と読む方もいる。江戸時代にはそういった「粋」と呼ばれる人物や文化があり、落語や歌舞伎などでそれが伝承し続けられている。
しかしその「粋」はどこから生まれ、育てられ、現代に根付いているのか、本書ではそのことについて取り上げられている。

第1章「江戸時代のメディア・プロデューサーたち」
「メディア」と言うとテレビや新聞、週刊誌などがあるのだが、江戸時代にはそのようなものは存在しなかった。かろうじてあったのが、新聞の原型だった「瓦版」と呼ばれるものだった。その瓦版とともに、活版印刷も栄えるようになったのだが、その原点にあったのが、平安時代につくられた「鳥獣戯画」である。当時から紙で作られ、活版印刷が栄えるようになった。そう、メディアは上方から生まれたのだという。

第2章「江戸時代に成立した日本型資本主義」
日本における資本主義は明治時代から生まれたのかと思ったが、実は江戸時代の時から日本独特の資本主義を生み出していたのだという。その独特の資本主義の中にあったのが「米本位制」だった。当時は硬貨・紙幣などのものはあまり出回っておらず、米がお金の代わりとなっていた。

第3章「江戸の「モノづくり」は「モノ語り」づくり」
日本は「ものつくり大国」として知られているのだが、その文化は江戸時代からあったという。どのような「ものつくり」なのかというと、「からくり」があったという。「からくり」というと、忍者特有のイメージを持たれるのだが、その「からくり」は人形などにも応用されている。
またからくりをはじめとした「ものつくり」は現代にも使われたのだが、それとともに、「モノ語り」と呼ばれるストーリーに変化していった。

第4章「時をめぐる少年少女たち」
現在のような時間・年月日の使われ方をしたのは明治時代に入ってからのことである。現在使われているのは「太陽暦」と呼ばれるものであり、それまでは「太陰暦(旧暦)」が使われていた。ただ江戸時代には、この「太陰暦」のみならず、独特の「江戸タイム」が存在しており、使われていたという。

第5章「江戸と上方の動物観」
江戸時代における「動物」というと有名なものとして、五代目将軍の徳川綱吉が発令した「生類憐みの令」が挙げられる。しかしこの「生類憐みの令」は一つの命令ではなく、いくつもある動物に関するお触れをまとめたものの総称として表している。
そもそも「生類憐みの令」が出る以前から江戸・上方ともに動物を親しんでおり、守っていたという。しかし動物観は江戸・上方とで異なっていた。そのヒントには将軍の存在や食文化の違いがある。

第6章「ジャパンクールのルーツ……粋・通・連」
最初に「粋」という言葉の違いについて書いたのだが、そもそも「いき」と読むのは「江戸」が多く、「すい」は「上方」が多いという。それぞれの「粋」の文化がどのようにして形成され、世界に伝えられる「ジャパンクール」となっていったのかについて取り上げられている。

日本独特の「粋」の文化は江戸時代から形成づけられているのだが、それはヒト・モノ・カネ・動物とありとあらゆる要素によって成り立っていった。その足跡を振り返り、今の「粋」を形成づけるヒントが本書にある。