雇用崩壊と社会保障

「雇用崩壊」はいつ起こったのかというと、バブル崩壊のイメージが持たれるのだが、本書で取り上げられているのは、「リーマンショック」による雇用崩壊、そして「派遣切り」が横行した時代が挙げられる。その時代には、「雇用崩壊」のみならず、非正規雇用における「社会保障」が揺らいだことが挙げられる。
本書はなぜ雇用や社会保障が揺らいでいるのか、そしてこれからどうあるべきなのか、そのことについて迫っている。

第1章「加速する雇用・社会保障の危機」
雇用や社会保障に関する問題は後を絶たない。一例として挙げると、まず「雇用」は、

・過労死や過労自殺
・非正規雇用の拡大
・ブラック企業

が挙げられる。また、「社会保障」では、

・生活保護の急増
・国民健康保険料の未納
・国民年金保険料の未納

・上記2つによる、皆保険・皆年金の破綻
がある。そういった状況により、格差や貧困が生まれ、社会に経済的な歪みが生じている。

第2章「雇用保障・社会保障の仕組み」
そもそも「雇用」や「社会」などの面で「保障」されるような仕組みがあるのだが、その仕組みとして「保険」「年民」「手当」などが制度化されている。

第3章「雇用崩壊はなぜ生じたのか」
雇用崩壊自体は1980年代後半まで「終身雇用」が当たり前となったものが崩れたことから始まるのだが、崩壊の変容は80・90年代、そして「リーマンショック」以降とで異なってくる。前者の場合は「終身雇用」の崩壊によるもので、経費削減のための「リストラ」が相次いだこと、後者は第1章にて述べたように「派遣切り」が横行したことが挙げられる。

第4章「社会保障はどう発展してきたか」
しかし「社会保障」はどのように発展していったのかを知る必要がある。そもそも今ある「社会保障制度」がつくられたのは戦後GHQの指令によるものだった。それから国民皆保険・国民皆年金がつくられていき、社会保障を発展していった。しかし雇用崩壊が起こり、さらに団塊の世代が定年になって行くにつれ、変化が必要になってきた。現に変化は続いているのだが、それでもなお対応し切れていない現状にある。

第5章「社会保障はどのようにして機能不全に陥ったのか」
変化に対応しきれず「機能不全」の状態に陥っているという。その機能不全の原因には、歴代内閣の社会保障政策の頓挫や誤算が挙げられているのだが、本章では小泉・安倍(第一次)・福田・麻生の各政権における政策を取り上げ、変化について指摘している。

第6章「これからの雇用・社会保障はどうなるのか」
これから医療や福祉などの社会保障はどうなっていくのかと言うと、高齢化社会も相まって、財源確保が大きな課題となっている。その財源を確保するために「税収」が大きなキーワードとなり、現に消費税増税もその一環という形だったのだが、それで対応し切れているのかというと難しい一面もある。そのため雇用や社会保障の政策の見直し・改善は一筋縄には行かないのが現状である。

日本の社会保障は世界的に見ても、どちらかと言えば充実しているのだが、それでも課題は山積している。もっとも何も手を打たないと、社会保障の根本から破綻し、国民の生活を脅かしてしまいかねない。そのため緊急度が高い課題なのだが、それをいかに解決して行くのか、課題の解決の糸口が見えない状況にあると言っても過言では無い。