影の銀行―もう一つの戦後日本金融史

日本経済の裏で支える銀行だが、その銀行の中には金融当局の規制や監視を受けない銀行が存在するという。その銀行は表向きの銀行と手を組み利益を拡大し、そして世界経済を揺るがすような存在にまで変貌していったという。その「影の銀行」の存在について本書では迫っている。

第一章「資本不足の時代」
著者は、大学卒業と同時に銀行に入行し、長年勤め、その後投資会社を経て、現在は年金コンサルタントとして活躍している。そのため本章では著者が銀行に入行してからのエピソードがふんだんに盛り込まれている。その入行してからの時代から、数年してからのことについての情勢とともに、著者の経験をつづっている。

第二章「忍び寄る投機の影―石油危機から金融自由化へ」
石油危機といったら、最も有名なものとして1973年に第四次中東戦争に伴って起こった「第一次石油危機」が挙げられる。その石油危機についてはトイレットペーパーなどの日用品に主婦が多く詰めかけるシーンが印象的なのだが、金融機関でも同様のパニックが起こったという。しかしそれ以上に金融業界で大きな「事件」として挙げられるのが、アメリカにおいて、当時の米大統領がドルと金の交換を停止したという「ニクソン・ショック」があった。

第三章「金融危機からバブル崩壊へ」
バブル崩壊が起こったのは90年あたりの時であり、その後に起こったのが1997年前後の「金融危機」なので正確には「バブル崩壊から金融危機へ」と言った方が正しいのかもしれない。ちなみにここでいう「金融危機」は「北海道拓殖銀行」や「山一證券」をはじめとした銀行や証券会社の倒産と言ったことが起こり、金融機関の安定神話が崩壊したことにあった。ちなみに本書のタイトルで「影の銀行」が出てきたのがここである。

第四章「影の銀行と投機の時代」
影の銀行は高度経済成長とともに出てきて、バブル崩壊以降隆盛を極めた。本章では、その「影の銀行」の定義についても取り上げているのと同時に、金融危機以降の「投機」の時代について取り上げている。

第五章「金融不安定化の構造」
金融危機の後にあった「金融ビッグバン」と呼ばれる金融再編が起こった。それと同じくして、日銀が金融政策を次々と打ち出し、信用を膨張しようとした。結果的に「失われた10年」から脱却し、「戦後最長の好景気」につながっていった。

影の銀行というと、もちろん言葉としては出てこないのだが、本書にある定義を見ると、割と身近なところにあるといえる。しかし影の銀行では私たちの生活では見えないところで経済を動かしている。本書はその一端を垣間見ることができる。