鉄道会社の経営 – ローカル線からエキナカまで

日本は「鉄道大国」と呼ばれるのだが、実際には次々と廃線したり、新しい路線が開通したりとめまぐるしい状況にある。しかし津々浦々に敷設されていても、特に地方では鉄道路線がなく、バスやマイカーでしか行くことができないところもある。

そう考えると鉄道で事足りるようなものではないのだが、それは鉄道会社の事情がある。本書は鉄道会社がどのような経営形態を行っているのか、そして経営努力を行っているのか、そのことについて取り上げている。

1.「鉄道の経営とは」
鉄道会社というとJR(北海道・東日本・東海・西日本・四国・九州・貨物)が挙げられるが、ほかにも東急や京急、東武、西武などの「私鉄」も挙げられる。経営的に常に黒字を出しているというと、JR東日本やJR東海、あとは首都圏の私鉄会社くらいで、ほかは軒並み赤字が現状である。

2.「日本の鉄道事業の特徴」
日本における鉄道事業の特徴は「効率的」であるという。本章ではそのメカニズムと取り上げると同時に、ローカル鉄道会社の事情についても併せて取り上げられている。

3.「新幹線鉄道網の形成」
今年の3月に北陸新幹線が開通し、そして来年の3月には北海道新幹線が開通する新幹線だが、そもそも新幹線はいつごろにできたのか、工事に着手したのは1959年、そして開通したのは1964年10月1日、東京~大阪の区間であった。そこから山陽新幹線や東北新幹線など様々な新幹線の路線が敷設された。

4.「都市鉄道の整備」
「都市鉄道」は市営電車(地下鉄も含む)のことを表している。どのような鉄道化というと都営地下鉄もあれば、東葉高速鉄道、埼玉高速鉄道などがある。本章ではその整備事情について取り上げられている。

5.「鉄道会社のレジャー開発」
鉄道会社は何も鉄道運営だけを行っているだけではない。本章で取り上げるレジャーや7.で取り上げる観光、8.で取り上げる住宅・不動産、9.で取り上げるテナントなど、鉄道会社でありながら多角的な事業展開を行っている。ここでは「レジャー」にフォーカスを当てているが、一例として小田急電鉄の「向ヶ丘遊園」、阪急電鉄の「宝塚歌劇場」などが挙げられる。

6.「鉄道会社の増収努力」
鉄道会社では増収のために、様々な努力をしている。「いろいろ」となるとレジャーや観光・エキナカなどにも目を向ける必要があるのだが、本章ではあくまで「鉄道」にフォーカスを当て、どのような工夫をしているのかを挙げている。一例としてJRの「在来線グリーン車」、小田急電鉄の「ロマンスカー」などが取り上げられている。

7.「鉄道会社の観光開発」
本章では首都圏以外において観光名所を基軸に、鉄道開発はどのように行ったのかを取り上げている。種類もSLやトロッコ、特急列車などがある。

8.「鉄道会社の沿線開発―住宅地とターミナル」
仕事のためにJRの列車に乗ることがあるが、その列車の中吊り広告を見ると、住宅地の販売などがある。なぜ鉄道会社は住宅地の開発にかかわりを持つようになったのかそれについての理由と、住宅開発の現状とともに列挙している。

9.「鉄道会社のエキナカビジネス―JR東日本の場合」
「エキナカ」といえば、駅によってはコンビニのほかに、ファッションなど様々な店が展開している。なぜ鉄道会社は「エキナカ」のビジネスを展開しているのか、その本質について取り上げている。

10.「必要な鉄道の維持のために」
鉄道事業の維持は鉄道会社にとっては大動脈である。その維持のために利益が必要であり、多角的な事業展開を含めて各社とも工夫を凝らしている。また、インフラ整備もまた鉄道会社の役割としてどのように維持をすべきか、鉄道会社各社は頭を張り巡らせている。

かつては「国鉄」と呼ばれる国営企業だったのだが、今となっては全て民間企業である(JRは、少し毛並みは異なるものの、民間企業と言っても差し支えない)。民間企業であるため、生き残るために、様々な戦略を構築し、実行している。その知られざる鉄道会社の事業や経営形態について本書でもって知ることができる。