ヒマラヤを越える子供たち

ヒマラヤ山脈といえば最高峰で8848メートルにもなる高峰の山々が連なっているところである。それ故に過酷ともいわれるほどの環境の中で、様々な目的をもってヒマラヤ山脈を越えようとする子供たちがいる。その目的も国としての「事情」があったという。

子どもたちはなぜヒマラヤの過酷な環境をわたっていくのか、そしてその目的とは何か、本書はそのことについて取り上げている。

<第1部>
子供たちがチベットからヒマラヤを越えて亡命する理由はそれぞれ異なっている。本書で取り上げている少年・少女は、ある子は父親の家庭内暴力に耐えかねて、ある子は国の事情、ある子は他国で良い学問を身につけたいために、ある子は政治犯として投獄を恐れたために亡命することとなった。
この第1部では、亡命する子供たちが、どのような経緯で亡命することになったのかを詳しく綴っている。私たち日本人では到底理解できないほど過酷な運命に翻弄され、亡命を決心した子供たちの姿があった。

<第2部>
それぞれの思いを持って亡命する子供たちとそれを手伝いする方々が、どのように亡命していったのかを描いている。過酷なヒマラヤの環境も事細かに描写されており、亡命がいかに大変なのか、地形的な環境のみならず、様々な障害が待ち受けている所、そしてそれらがどのようにしてできたのかも説明されている。

実は本書の内容はドキュメンタリー映画としてDVDで販売されたものである(現在もアマゾンなどで中古として販売されている)。過酷な環境と情勢のなかで、恐怖から脱出するために、そして夢や光を求めて、そして自由を求めて亡命する姿は正直言って、文章を通じて伝わり、言葉を失うほどだった。本書はその言葉を失うほどの過酷な現実をありのまま伝わっている一冊であり、チベットのリアルについて知りたい方々であれば必読の一冊と言える。