葬送の仕事師たち

かつて映画で「おくりびと」というものが放映され、様々な賞を総なめにした。実際にその「おくりびと」がフォーカスされているのは「納棺師」と呼ばれる職業であり、実際にある仕事である。他にも葬儀を始めとした「葬送」に関する仕事に従事している方々がおり、マーケットとしても右肩上がりが続いているという。その葬送に関する仕事に従事している人たち、あるいは志している人たちはどのような存在であるのか、本書ではそのことについて取り上げている。

第1章「「葬儀のプロ」を志す若者たち」
葬式に関連する仕事は、「死」に関する仕事であり、縁起が悪く、忌避されやすいため、あまり志す人がいないのではといイメージがあった。しかし本章で見る限りそういった仕事を志す若者は少なからずいると言い、なおかつ葬送にまつわる仕事のプロを育成する専門学校があり、本章ではその学校を取り上げている。

第2章「それぞれの「葬儀屋稼業」」
最初にも書いたとおり葬儀業界は右肩上がりの状態が続いており、大手企業が続々と葬儀業界に参入すると言ったこともある。また葬送の方法についても葬儀の形式・手法が多様化されていったこともまた、葬儀業界が右肩上がりになった要因の一つである。
その葬儀屋稼業と言っても色々な職業がいるのだが、本章ではそれらの仕事について取り上げている。

第3章「湯灌・納棺・復元の現場」
「納棺」は「おくりびと」でも取り上げたが、「湯灌(ゆかん)」の仕事は、
「お湯をわかし、盥(たらい)に水を入れておき、それにお湯を注ぎ、遺体を洗浄する」(p.87より)
とある。これは昔ながらのものであり、現代は斎場でも湯灌のサービスがあるという。「復元」は傷んだ遺体を復元する仕事を言う。そういった仕事を行っている方々をピックアップしているのが本章である。

第4章「エンバーマーたち」
「エンバーマー(embalmer)」とは、

「遺体に修復、殺菌、防腐処理など(エンバーミング)を行う技術者」(p.8より)

という。先述の通り、遺体のエンバーミングは高度な技術が要求されるため、専門的な技術を持っていなければ難しいという。そのエンバーミングの概念が日本で出てきたのは戦後に入ってからのことである。そのエンバーミング、そしてエンバーマーの変遷について取り上げている。

第5章「火葬場で働く人々」
日本において遺体は土葬もできるのだが、ほとんど行われておらず、一般的は火葬を行う。それ故か日本では約5000もの火葬場が存在するという。その火葬場で働く人々について取り上げたのが本章である。

第6章「「超多死社会」に向けて」
日本は現在人口は右肩下がりを続けている。高齢化が進むのと同時に、多くの人々が死ぬといういわゆる「超多死社会」の様相を見せている。その社会の中で葬送業界はどうなっていくのか本章ではその展望を追っている。

葬送というと身近でありながら、あまり知られていない部分が多い。もっと言うとその葬送業界で働いている方々はどのような存在であるのか、そのことについて知ることのできる一冊である。