恋するオスが進化する

人は恋愛によって変化すると言われているのだが、これは人間に限った話ではないという。動物にしてもオスはメスに対して恋をすることによって進化をするという。その進化には「競争」や「対立」、さらには「選択」や「転換」によるものである。本書は、オスはどのように恋をして、進化を遂げていくのか、その変化についての実態を取り上げている。

第1章「【性分化】オスは寄生者として生まれた」
最初にオスがどのように生まれたのか、そのキーワードとして挙げられるのが「寄生者」である。どれに寄生をするのかは、言うまでもなく「メス」であるのだが、なぜオスはメスの「寄生者」となりえたのか、そのことについて取り上げている。

第2章「【異性間選択】選ぶのはメス、泣くのはオス」
竹取物語の中でかぐや姫に対して貴族たちが何人も求婚してきたシーンがある。こういった複数の男性が一人の女性に対して求め、女性が男性を選ぶシーンは何も物語だけの話じゃない。少し形は違うが「ねるとん紅鯨団」の番組でも「ねるとんパーティー」というようなものがある。
「ねるとん」ほどではないが、竹取物語のような話は生物でもあるという。

第3章「【同性内選択】戦うオス、企むオス」
こちらは異性とは違って、オス同士の争いを描いている。しかしオス同士の争いと言っても、オスから生まれる「精子」でも同じような競争があるのだが、こちらは次章にて記されている。本章ではその前段階である交尾をする段階で起こるオス同士の戦いを取り上げている。

第4章「【精子競争】子宮の中の競争」
オス同士の戦いは、実際の戦い以外でもある。交尾をした後に出てくる精子でも、受精するかどうか、さらにほかのオスの精子があると、その中で競争が起こるという。

第5章「【性的対立】モテないオスの大暴走」
繁殖をするためのリスクの一つとしてオスとメスとの対立もある。性的不一致という言葉があるのだが、その不一致の理由には何があるのか、そのことについて取りあげている。

第6章「【繁殖コスト】浮気を巡る冒険」
浮気というと人間がやることかと思ったが、人間特有のものではないという。オスが別のメスに浮気をすると言ったことではなく、むしろ逆にメスがオスに対して浮気をしているさまについて取り上げている。

第7章「【性転換】セックスはそもそもあやふやである」
生物にはオスだか、メスだかわからない種類があり、中には争うことによってオス・メスが分別される生物もいる。そのため生物そのものの「性」もあやふやであるという。本章でもとある魚を代表例に挙げられている。

本書を取り上げていくと、卑猥な本のように思えてしまうのだが、実際に生物の交尾は生存競争を続けていく、勝ち続けていくにあたって重要な要素の一つである。その交尾にあたりオス・メス・両方の観点からどのように争うなど進化を遂げていくのか、そのメカニズムが深まっていくのだが、生物はまだまだ種類もあれば生態も多様にあるため、まだまだ謎が多い。その謎の一つを解き明かすことができる一冊である。