いつでもクビ切り社会―「エイジフリー」の罠

会社に勤務されている方が見たらゾッとしてしまうようなタイトルであるが、現実的には起こり得るものである。日本では労働基準法により、解雇に関してはまとまった理由や期間を設けないといけないような話なのだが、海外だと、翌日には席が無くなってしまい、いつの間にか解雇されているというようなこともある。

ほかにも本書では「エイジフリー」という、いわゆる年齢制限を取っ払った現象も会社などの労働社会で起こりうるという。本書はクビ切りとエイジフリーの現実と対策について取り上げている。

第一章「エイジフリー社会がやってくる」
日本では長らく「年功序列」の労働社会であり、今もなお残っているのだが、それでも成果主義の要素を広げつつある。こういった「年功序列」だけではなく、求人情報を見てみると、「~歳まで」と言うような年齢制限の項目がある。しかし最近ではそれが緩和しており、年齢制限を取っ払う「エイジフリー」の社会が出来てきている。

第二章「定年制とエイジフリー」
かつて「定年」と言うと60歳、ちょうど還暦の年に退職をするケースが多かったのだが、最近では定年が65歳になったり、定年を迎えても「シニアマネージャー」や「顧問」と言った役職に就かせたりするような所もある。法律的には「定年制」を設けなければならない条文は存在せず、各企業の就業規則にて設けられているに過ぎない。こういった定年制はどのように変化するのか分析を行っている。

第三章「募集・採用とエイジフリー」
第一章で取り上げた「~まで」と呼ばれる年齢的な条件はかつてごく当たり前に存在したのだが、雇用対策法などの法律制定・改正により、まとまった理由がないと年齢制限を設けることが実質的に出来なくなった。もちろん改正をしても今もなお、条件に記されていないが、採用にあたりふるいをかける要素として今もなお残っている現状がある。そのことから法的にはエイジフリーは出来つつあるものの、現状としてそれが浸透しているかというと疑わしい。

第四章「諸外国のエイジフリー政策」
エイジフリー政策についてこれまで日本について取り上げてきたのだが、本章ではアメリカやヨーロッパなど、著者曰く「日本の先を行っているのかもしれない」とあるのだが、果たしてそうなのかを検証している。

第五章「「いつでもクビ切り社会」でよいのか」
本書のタイトルにあるテーマに入ったのだが、現状として企業は人員削減、いわゆる「リストラ」を行う企業はたくさんあるものの、「解雇」ではなく、「希望退職」を促して、自主的に辞めさせることにある。「解雇」となると様々な条件があるので難しいが、「自主退職」をさせるように働きかけると言った風潮から、ある意味で「クビ切り」を容易にしている部分はある。

第六章「「いつでも無礼講社会」でよいのか」
前章にも言及はしていたのだが、ここでは「能力主義」という「年功序列」に代わる存在があるのだが、それによりよく飲み会で言われてきた「無礼講」の状況ができはじめていると言う。そういった状況について著者はどのように思っているのかを述べている。

第七章「エイジフリー政策のあり方」
エイジフリーは第三章までの中で「政策」として行われてきた。その政策は果たして功を奏しているのかと言うと、そうしている部分もあれば、必ずしも宋とは言えない部分も存在する。その上で今後エイジフリー政策はどこに向かうべきか、それについて逓減を行っている。

第八章「エイジフリー社会に備える」
エイジフリーの風潮はこれから広がりを見せる一方で、未だに年齢や男女の差別はある。その差別が薄れ、真のエイジフリー社会を迎えるにはまだ時間はかかるのだが、もしもそういった社会になった場合、あなたはどのような備えをしたら良いのかについて逓減を行っている。

本書は「クビ切り社会」を標榜しているのだが、その前段階として「エイジフリー」になることについてが中心となっている。いずれにしても両方とも本書の通りに変わる可能性は捨てきれないのだが、もしも本書の通りとなった場合どうなるのか、そのことについて知ることの出来る一冊である。