エピジェネティクス――新しい生命像をえがく

エピジェネティクスとは、

「DNA 一次配列の変化ではなく,ヒストンのアセチル化,DNA のメチル化などの細胞内部の分子的機構により,可変的に遺伝子情報の発現が制御される機構」「大辞林 第三版」より)

とあるが、文字通りでは理解できないところが多いため、単純に「DNAから突然変異した遺伝子のようなもの」と言った方が良いのかも知れない。この突然変異から出てきたエピジェネティクスという産物が、人体に、病気に、人を始めとした動物の生命にどのような影響を与えるのか、本書はそのことについて取り上げている。

第1章「巨人の肩から遠眼鏡で」
本章のタイトルは遠くを見る、あるいは俯瞰をしながら、小さいものを見るという見立てであり、ニュートンの法則で有名なアイザック・ニュートンがものの見方について謙虚に語った時にでた言葉である。エピジェネティクスはそういった見立てで行う必要性について語っているのと同時に本章ではエピジェネティクスとは何かについて書かれている。

第2章「エピジェネティクスの分子基盤」
エピジェネティクスが起こる要因として「分子基盤」をもとに説明されているが、その中でヒントとなるのがゲノムにすり込まれている情報の中身や遺伝子情報というのがある。遺伝子レベルの細かい話がほとんどであるため、それに関する知識がないと本章は難しい。

第3章「さまざまな生命現象とエピジェネティクス」
本章では植物や動物に対してエピジェネティクスでもってどのような現象が起こるのかを取り上げている。動物・植物にもそれぞれ違いがあるのだが、本章では動物・植物といった大きく分けたかたちで取り上げている。

第4章「病気とエピジェネティクス」
では突然変異であるエピジェネティクスは病気にどのような影響をもたらすのか。本章では「良い影響」もあれば「悪い影響」も存在しているのだが、その両面について原因も絡めながら考察を行っている。

第5章「エピジェネティクスを考える」
エピジェネティクスを考えることは突然変異を利用したり、逆に防止したりすることができることを考えることと一緒である。ではどのように考えたら良いのか、本章では遺伝子レベルで取り上げている。

本書を取り上げるにあたり、わかりやすく「突然変異」と書いたのだが、本当のところ「エピジェネティクス」は突然変異ではなく、生命科学における新しい概念として「突然変異のようなもの」であり、サイエンスの世界ではホットな話題であるという。しかし私たちの生活では「エピジェネティクス」という言葉はあまり聞き慣れないため、頭の片隅に入れておく位で良いのだが、もしこれが実用の世界で使われることがあれば改めて知っておいた方が良いと言える。