無戸籍の日本人

株式会社オトバンク 上田様より献本御礼。
日本の隣国である中国では「一人っ子政策」により、無戸籍になった人たちが多く、社会問題として扱われることがあるという。しかし日本でも同じようにとある法律・事情から「無戸籍」として生きる方々がいるという。その数は1万人以上もいるのだという。本書は知られざる「無戸籍」となった日本人たちの現状を追っている。

第1章「戸籍上「存在しない人」たち」
無戸籍の人は少なからずおり、本章では無戸籍となったとある男を取材している。その「無戸籍」になった理由は次章以降取り上げられるのだが、そもそも「無戸籍」になることによって負うリスクとして「銀行口座」や「健康保険証」、「選挙権」や「携帯電話」「教育」などありとあらゆる面でできないことが多いのだという。

第2章「「無戸籍者」が生まれる背景」
そもそも無戸籍者が生まれる背景として何が挙げられるのか。その理由を述べる前にそもそもなぜ戸籍を取得できるメカニズムについて取り上げる必要がある。単純に言えば人が生まれた時に出生届を提出すれば良いのである。しかしその出生届を提出し、受理するためには14日以内という制限があるのだが、「何らかの事情」により、提出できずにその子が無戸籍者になったという。
その「何らかの事情」の中には、民法772条にある以下の条文が絡んでいる。

1.妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
2.婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する

特に下線を引いた部分が大きなネックになる。もちろんこれは氷山の一角であり、ほかにも戸籍制度への反対や貧困といったものもある。その「無戸籍者」となった人がどのような過酷な現実を歩んでいるのか、そのことについても言及している。

第3章「「無戸籍」に翻弄される家族」
その「無戸籍」であることから翻弄されてしまった家族もいるという。その家族は家庭的な事情により出生届を提出できず、無戸籍な状態で社会的・精神的に追い詰められることもあったという。本章ではそういった家族を取り上げている。

第4章「動き出した無戸籍者たち」
「無戸籍」は個人の問題から社会問題に発展することとなった。第2章で取り上げた民法772条第2項にある「300日」が大きなナックとなり「300日問題」として挙げられることとなった。陽の目を見始めたのはYahoo!ニュースに取り上げられたことからである。それが2006年のことで、それから「家族の会」が立ち上がり、国会にも遡上に上げられた。

第5章「政治の場で起きたこと」
その政治の場でようやく遡上に上げられたことは大きな一歩だったのだが、その政治的な駆け引きに翻弄され、そして潰されてしまった。そのことも相まって著者は2006年に兵庫県議会議員、そして2009年から2012年まで衆議院議員となった。著者も政治家として無戸籍者の救済に尽力したのだが、こちらでもまた翻弄され、成果に結びつくことはできなかったものの、きっかけを作ることはできた。

第6章「「その後」を生きる無戸籍者たち」
「無戸籍者」について大々的に取り上げられた番組として「クローズアップ現代」がある。無戸籍者が取り上げられたのは2014年のことである。本章ではこのことのほかに、これまで取り上げられた無戸籍者の今を追っている。

昨年12月の裁判で民法733条が定める再婚禁止期間が違憲である判決が出た。最高裁の判決により無戸籍者に関することの解決へ動くかというと不明であるが、この再婚禁止期間違憲判決による民法改正の引き金となり、無戸籍者が低減されるような民法改正になるかどうかはまだこれからの国会審議で議論され、具体的な改正にこぎつけるかどうか今国会にかかっている。

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