プロの尼さん―落語家・まるこの仏道修行

本書で取り上げる落語家は「尼さんであり落語家である」方であるが、仏門に入った落語家は存命している落語家の中では三代目三遊亭円歌が挙げられる。そう考えると仏門に入った落語家はいないわけではないのだが、非常に珍しい。もっと言うと今でこそ女性の落語家は出てきているのだが、上方でも三代目桂あやめをはじめ数人しかおらず、こちらの面でも珍しい。
話を戻す。そもそも著者はなぜ落語家になり、それでいて仏門に入ったのか、そのことについて綴っている。

第一章「女子高生、仏教と落語に夢中」
元々著者は落語に興味を持ったのは、小学生の時から舞台に上がったのだが、とあるオーディションで審査員から放たれた一言から芸人の道を歩むことを決意した。その芸人に進もうとしている中で落語に興味を持ち、それから落語に関する本を仕入れるようになった。それと同時に宗教に興味を持ち、聖書やコーラン、法華経などを購入し、いつの頃からか法華経にハマっていった。ちょうど女子高生の頃であるが、宗教と落語の両方に興味をもった女子高生もなかなかいない。

第二章「落語家修行」
高校卒業後、著者は露の団四郎門下に入ったのだが、元々は二代目露の五郎兵衛に興味を持ち、その弟子である露の団四郎の落語を直接見て一目惚れし、弟子入りしたという。もちろん落語家になるための修行は過酷なものだったのだが、特に上方の女流の場合は男女差別との戦いにも耐える必要があった。その戦いの中で大師匠の二代目露の五郎兵衛や他の女流落語家たちの激励もあってもあったという。また本章ではかつて朝の連続テレビ小説で放送された「ちりとてちん」の裏話も言及している。

第三章「仏教徒とクリスチャンの結婚」
落語家の修業の後、テレビのレギュラーを持つようになったという。その多忙の中で修行に励んでいったのだが、その中で天台宗の方との縁ができ、仏教の修行を本格的にスタートするきっかけをつくった。さらに著者は結婚することとなったのだが、何と仏教徒とクリスチャンというある意味宗教対立が起こるかも知れないような夫婦が誕生した。

第四章「まるぼうず誕生」
著者は2011年に天台宗へ出家し、本格的に仏教の修行をすることとなった。元々は早く出家したかったのだが、まだ番組を持っていたので、それを待ってからだったという。そして現在の剃髪姿をそれから尼さんと落語家との兼業をすることになった。

第五章「仏教が好きやねん!」
落語家で尼さんの姿はすぐに認知されるようになったのだが、それと同時に批判や中傷もあったという。もちろん著者は長年培ってきた信念でもって現在の仕事をやってきているなど、本章でもってそういった意見に対して反論をしている。

著者は落語家になって昨年でちょうど10年、そして尼さんになって今年でちょうど5年を迎える。まだまだいずれも修行中のみであるが、落語家でしかできないこと、尼さんでしかできないこと、それぞれを考えながら日々活躍している。