グーグル、アップルに負けない著作権法

世の中には様々な選書があるのだが、その中でも最も新しく作られたのが「角川EPUB選書」といえる。ちなみに本書はその第1号に位置づけられており、なおかつKADOKAWAの会長自身が筆を執ったところに意気込みが感じられる。おそらく本書を出すにあたり「EPUB(電子書籍のファイルフォーマット規格)」に関連する著作権についての出来事があったという。それは本書の「はじめに」にて記載されている。その出来事を綴りつつ、変わりゆく著作権の在り方はどうなるのか、どうあっていけば良いのかそのことについて取り上げている。

第1章「コンテンツのクラウド型流通と情報端末が変える著作権」
「クラウド」の概念はすでにビジネス、プライベート双方にて浸透しているのだが、そのクラウドの技術にはどのような著作権が存在し、アメリカにおいての著作権法の変遷と、日本の著作権法改正などを比較についてを本章では取り上げている。

第2章「スマートテレビと著作権」
最近ではスマートテレビなるものが出てきたという私自身はそれに関してあまり知らないため、ちょっと説明すると、

「デジタル放送の受信とともに、以下の2つの機能を保有する端末、またはセットアップボックスなどのテレビ周辺機器をいう
 ア)インターネット経由の映像をテレビ画面で視聴することが可能
 イ)高い処理能力を持つCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)が搭載され、スマートフォンのようにゲームなどのアプリケーションをテレビで利用することが可能」(p.108より)

という。このスマートテレビでもってテレビとネットの融合を果たすことができたのだが、その融合の中で壁となっているものの一つとして「著作権」がある。その「壁」とはいったい何なのか、そのことについて取り上げている。

第3章「エコシステムと著作権」
「エコシステム」とは、

「エコシステムとは、本来は生態系を指す英語「ecosystem」の日本訳の科学用語であるが、21世紀の日本においては動植物の食物連鎖や物質循環といった生物群の循環系という元の意味から転化されて、経済的な依存関係や協調関係、または強者を頂点とする新たな成長分野でのピラミッド型の産業構造といった、新規な産業体系を構成しつつある発展途上の分野での企業間の連携関係全体を指して用いられることが多い」Wikipediaより)

とある。たとえの一つとして電子書籍の出版流通ビジネスがある。そのシステムに対しても「著作権」が存在しており、それに関するせめぎ合いがあるという。本章ではアップルの故スティーブ・ジョブズが構想を持っていたエコシステムと著作権との闘いをモデルケースに考察を行っている。

第4章「著作権の現状と将来を語る」
最近大筋合意となったTPP(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement:環太平洋戦略的経済連携協定)の中に著作権を含めた「知的財産」の変化がある印象だが、その「著作権」の現状と、将来の変化、そして著作権に関するビジネスの在り方について本章では著者と著作権に詳しい学者、さらにはコンテンツビジネスの長などの人物の対談を行いながら見出している。

著作権法はこれからも変化するのだが、この法律の変化によっては、今あるコンテンツビジネスが大きく変化する。その変化は日本にとって良い方向に向かうことができるのか、それとも悪い方向に向かうのか、これからの著作権法改正の議論にかかっているのかもしれない。