すべらない敬語

「すべらない」と言うと「人志松本のすべらない話」を連想してしまうだろう。しかしその連想じゃなくても、敬語などの言葉の中で使い方を間違ってしまうことは往々にしてあり、自分自身も書評をしている中で言葉の間違いでスベってしまうと言うことがある。
そのスベってしまうことにならないように本書では敬語をどのように使ったら良いのか、アナウンサーの立場から伝授している。

1.「敬語革命、勃発す」
ビジネスでもプライベートでも敬語を使うことは日常茶飯事としてある。しかしその敬語は本当に正しいのかという以前に、そもそもの「敬語」のあり方が変化しているという。その意味合いで本章では「敬語革命」と呼んでいる。

2.「「正しい敬語」はころころ変わる」
そもそも日本語も含めた言葉は生き物にほど近く、日に日に変わっていく。それは敬語であっても例外では無い。しかし変化している中で正しくない使い方をすると、痛い目に遭うことは変わりない。

3.「敬語業界vs国家」
「敬語業界」というのはどんな業界なのかという疑問を持たれるが、簡単に言えば敬語などのビジネスマナーを教える講師や、「敬語」にまつわる本の著者たちのことを指しているのかも知れない(そう考えると著者も業界人かもしれない)。その業界と国家との対立の構造は何か、それは「お話になっていらっしゃる」というような「二重敬語」が解禁されたことにある。

4.「敬語は自己責任にある」
とは言っても「敬語」は使い方によって相手の印象を変える。自分自身の使い方によって左右されるため、本章のタイトルにある通り「自己責任」と言える。

5.「トムとキムはどうなのか」
キムというと例の人物を思わせるのだが、本章ではあえて「西洋」と「東洋」の区別をするために人名で取り上げている。その「西洋」と「東洋」とで敬語の扱われ方が異なるのだが、その要素を本章にて取り上げている。

6.「三大名人に学ぶ技」
本章で取り上げている「三大名人」はみのもんた・久米宏・小倉智昭の3人である。また本章ではほかにも女子アナの言葉遣いも言及している。

7.「小泉さんと安倍さんの差」
本書が出版されたのは2008年1月なので、本章で取り上げている「安倍さん」は第一次安倍政権以前のことを表している。本章ではほかにも東国原英夫前宮崎県知事や石原慎太郎元東京都知事のことも取り上げている。

8.「くすぶるマニュアル敬語問題」
「敬語マニュアル」というのは、主に接客業の中で使われる「敬語の使い方」をマニュアル化したものである。そのマニュアルを使うことによて敬語が崩れてしまっている、押し付けるような敬語になってしまうようなことが起こっていることを「マニュアル敬語問題」とある。

9.「失敬と尊敬の間」
敬語を使ったとしても失敬に値するようなものもあれば、タメ語で話していても失敬にならないようなこともある。もちろん敬語はネットの時代でも必要なことであるのだが、その使い方というよりも、むしろ「気配り」などを提示しているように思える。

10.「お疲れ様かご苦労様か」
「ご苦労様」は上から下へのねぎらいの言葉であるが、「お疲れ様」はどうか。よく言われるのは下から上へのねぎらいのことばのように見えるが、実はそうではなく「ご苦労様」と同じような形だという。これは以前に取り上げた本でも同様に言われているためここでは割愛する。

11.「肩書きに敬意をこめて」
日本人は肩書を重視する国であるが、肩書と言っても喜ばしいものもあれば、周囲から白い目で見られる肩書も存在する。とはいってもどんな肩書にも敬意を込める必要があると、本章で示している。

12.「褒める姿勢、謝る態度」
人をほめたり、失礼を詫びて謝ったりする姿勢はどうしたらよいのか、それについて敬語とともに取り上げている。

敬語は誰でも身につけるべきものであるが、それは日々刻々と変化し、なおかつ誤った教え方・使い方をするケースさえある。その中ですべらないためにどのような敬語を学ぶべきかというと、これは実際に使ってみて、相手によって変える必要があると言うほかない。そもそも敬語に限らず、言葉は受け手によって異なるからである。