眠らない―不眠の文化

人間において「睡眠」は最も大事な要素の一つである。その睡眠をしないという、いわゆる「不眠」をするというようなこともある。ちなみに「不眠」は「不眠症」を始めとした「睡眠障害」に挙げられるような人体的なもの、さらには「24時間営業」というような社会的な要素も本書では定義づけられている。サブタイトルに「文化」があるだけに、社会的な要素も含まれる。

本書はその「不眠」におけるものはいつ頃からでき、それが文化として成り立っていったのか、そのことについて取り上げている。

第1章「古代世界でのインソムニア」
「インソムニア」とは辞書で調べると「眠れないこと、不眠症Weblio辞書より)とある。しかし古代には不眠の概念は全くと言っても良いほどなかった。そもそも「時間」を持つ概念が存在しなかったからである。とは言っても様々な戦いのための不安や焦燥、心配などの感情から眠れなくなると言うようなことは往々にしてあるため、「文化」や「概念化」せずとも、人間として「眠れない」ようなことはあった。

第2章「愛、労働、不安」
「不眠」は人間の感情・心情によってもたらされる要素がある。それは「愛」焦がれるような「恋情」もあれば、第1章で述べた「不安」も存在する。また他にも夜通しで働くというようなこともある。この3つの要素と「不眠」との関係について中世~近世の時代背景と共に取り上げている。

第3章「理性の眠り」
コーヒーなどカフェイン飲料を飲むと眠れなくなると言う話をよく聞くし、私自身もそういった体験は何度もしている。そのコーヒーは15世紀頃にヨーロッパ大陸の間で世間に受け入れられたのだが、その弊害についても指摘されたという。
そのほかにも本章では「眠り」について「退屈」や「苦痛」といった感情と共に、理性的な眠りとはいったい何なのかを論じている。

第4章「帝国の夜」
本章で言うところの「帝国」は18世紀半ばから19世紀にかけての出来事であるため、ヨーロッパ大陸の帝国と呼ばれた国々を指しているのかもしれない。そういった国々の夜とはどのような印象だったのか、本章ではその背景と共に説明されているが、本章には当時江戸時代の日本の夜も同様に取り上げられている。

第5章「眠らない都市」
今となってはコンビニをはじめ24時間営業をしている店はいくつもあり、街の店や家が全て暗くなり、眠る状態になることはほとんどない。その「眠らない都市」はいつ頃からできたのか、本章では19世紀から20世紀にかけての都市背景とともに取り上げている。

第6章「配線に囲まれて」
眠れない、もしくは眠らない方々は歴史的な人物にも存在する。本章ではマーガレット・サッチャーなどの人物も取り上げられているが、本章ではその眠らない人物とインフラについて取り上げている。

人間として睡眠はなくてはならないものであるが、最近では眠らないための様々なものが出てきており、仕事によっては眠らずに続けることもある。しかしそれは不眠の文化によって生まれた産物であるのかも知れないが、その文化の歴史は本書を見るにかなり深いと言える。