肩書き捨てたら地獄だった – 挫折した元官僚が教える「頼れない」時代の働き方

日本人は「肩書き」に弱い。「社長」や「部長」といった肩書を持つとちやほやされるのだが、その企業や肩書きから脱却する、いわゆるリタイアをする、あるいは独立をするとそのちやほやする人たちが去っていき、さみしくなってしまう。もっと言うとそのことによって地獄の人生がスタートする人もいる。

その地獄の人生を歩んだ人の一人として著者がいる。元々著者は経済産業省の官僚を勤め、上り詰めていったが、退職を機に地獄の人生だったのだという。本書はその人生を赤裸々に明かすとともに、肩書を捨てた後の人生をどうしていけば良いのかを伝授している。

第一章「肩書きを捨てたら地獄だった」
著者は東大卒後、経済産業省に入省した、もう誰もがうらやむ「エリート」である。しかしなぜそういった方が肩書きを捨てたのか、そのきっかけとして「東日本大震災」が挙げられる。この出来事で自分の人生を考えて起業をするため、経済産業省を退職したのだという。しかしその起業計画は頓挫、文字通りの「地獄」の人生を歩みだした。

第二章「たどりついた「セルフブランディング」という戦略」
地獄の人生の中で得たもの、それは「セルフブランディング」である。ビジネス書でもよく出てくる用語であるが、本章ではブログやSNS、そしてメールマガジンを通じて、どのように情報発信をしていくかを取り上げている。この戦略を構築し続けたことによって地獄の人生から脱出することができたという。

第三章「これからの働き方―フリーエージェント論」
「フリーエージェント」という言葉を聞いてもピンと来ない方もいると思う。「フリーエージェント」とは、

「1.スポーツで,所属チームとの契約を解消し,どのチームとも自由に契約を結ぶことができる選手。自由契約選手。
 2.プロ野球などで,在籍期間などの一定の条件を充たし, 1.の権利を得た選手。FA。」「大辞林 第三版」より)

とある。あくまで辞書としてはプロ野球選手のフリーエージェントを取り上げているが、ビジネスなどの観点では1.の傍線部分にあたる。これは約4年半前の「だから、僕らはこの働き方を選んだ~東京R不動産のフリーエージェント・スタイル~」という本でも同様に取り上げているため、そちらも参照していただきたい。そのフリーエージェントの時代の中でどのような要素が必要で、どのようにして働いていけば良いのか、本章ではそのことについて具体例をもとに伝授している。

第四章「なぜ「会社」と「国」に頼れなくなったのか」
もはや会社も国も自分の身を守ることで精一杯で、他人を守る余裕もなくなってしまった。もちろん人も会社や国に頼ることができなくなってしまった。そのできない要因とはいったい何なのか、本章はそのことについて高度経済成長期からの歴史と、経済状況とともに考察を行っている。

第五章「そして、その頼れない世界で生き抜く技術」
誰も頼れなくなったのであれば、自分自身を頼り、そして頼られる存在となって生き抜いていくほかない。崩壊をただ指くわえて待つよりも、様々なことを吸収し、変化し、そして成長していくことによって生き残ることができる。もちろんフリーエージェントとしての生き方も本章にて提示しているのだが、あくまで本章では生き抜く技術すべてを伝授している。

日本では非正規労働者が増え、正社員が減少している。それだけ企業にしてもコストカットが求められ、私たちももっと自由に働きたいという感情も増えてきている。そのような時代の中でどのように働き、生き残っていくか、それはありとあらゆる方法をトライし、そして自らのものにしていくほかない。本書はその参考材料となる一冊である。