貧困化するホワイトカラー

ホワイトカラーとは簡単に言うと、サービス業に従事している方々すべてのことを表す。しかしそのホワイトカラーは年々激務にさらされ、中には過労死・過労自殺に追い込まれる方もいるのだという。政府はもちろんのこと、企業によってはそれにまつわる対策を行い、解決に向けて動き出してはいるものの、なかなか解決には結びついていない。しかも金銭面でもなかなか恵まれず、いわゆる「ワーキングプア」と呼ばれるような貧困化に結び付いている要因にもなっているという。本書はそのホワイトカラーの現状と対策について追っている。

第1章「悲しき中流階級―ホワイトカラーの原像」
高度経済成長の中にあった時に「一億総中流」という言葉があった。どのような状況にあっても人は「中流」だということを意識していたのだが、現在は中流どころか、多くは「下流」に飲まれている状況にあることから、中流階級の悲しさがあるという。

第2章「しぼられるホワイトカラー」
日本の労働者の多くはサービスをはじめとした第三次産業に従事している労働者、そう「ホワイトカラー」である。しかしそのホワイトカラーは様々な角度からしぼられているのだという。その要因として何があるのかを本章にて取り上げている。

第3章「このままでは仕事に殺される」
「仕事に殺される」という言葉は嘘のように思えて実は本当にあったことである。その理由して過重労働、さらにはサービス残業、さらには精神的な追い込みといったことが、心身ともに多くの負担をかけ、それが過労死や過労自殺の引き金となってしまっている現状にある。

第4章「雇用差別に屈しない」
男女差別の撤廃は政府主導で進んではいるものの、企業によっては未だに進まない、あるいは関心の示さないところもある。しかもより男女差別をしようとする企業もあるというのだが、それに屈しないためにどうしたらよいのかを伝授している。

第5章「阻止されたホワイトカラー・エブゼンプション」
本章のタイトルにある「ホワイトカラー・エグゼンプション」は今から10年ほど前に第一次安倍政権によって提唱されたものであるのだが、そのことについて「残業ゼロ法案」といった批判が相次いでいった。結局のところこの案は先送りになったのだが、実際にはそれに近いような制度が企業でも取り入れられていった。本章はその法案に関する批判が中心となる。

本書が出版されたのは2009年なので今から7年前の話である。その当時の労働環境はまさに本書にある通りと言えるのだが、それから7年してどのように変化したのかということを考えると、ほとんど本書と全く変わった形跡がない。あったとしても第5章の法案が言われなくなったくらいと言える。そのような状況の中で労働改革は進むのか、それは定かではない。