レバノン杉物語―「ギルガメシュ叙事詩」から地球温暖化まで

レバノン杉とは、

「西アジア原産のヒマラヤスギ属の針葉樹。樹形は端正な円錐形。シリア・レバノンなどに森林があったが乱伐された」「広辞苑 第六版」より)

とある。レバノンと言うと今、ISILのこともあり、予断を許さない状況にある。その中でもレバノンの自然で特徴的なものとして「レバノン杉の森」があるという。これはあまり知られていないのだが、幻想的であるという。それは第1章にて取り上げるのだが、このレバノン杉は今絶滅の危機に瀕しているのだという。本書はその現状とレバノン杉のこれからを取り上げている。

第1章「レバノン杉の森を歩く」
レバノン杉のある森の中に「神の杉の森」と言うのがある。著者はその森に赴き、その幻想的なたたずまいを克明につづっているのだが、レバノン杉は非常に深い歴史があることも本章にて言及している。もちろん第2章にて詳しく取り上げられるのだが、「人類最古」と呼ばれるときにまで及んでいるという。

第2章「栄光と受難の歴史」
その「人類最古」のキーワードの正体は簡単に言うと人類最古の叙事詩である「ギルガメッシュ叙事詩」である。ギルガメッシュと言えば小説・ゲーム・アニメになったFateシリーズに出てくる英雄王を連想するのだが、そのモチーフとなったのがメソポタミア文明におけるシュメール初期王朝の伝説的な王であり、叙事詩にも出てくる人類最古の英雄・ギルガメッシュである。このギルガメッシュの叙事詩の舞台がレバノンの地域もあることからレバノン杉との関連性があるのだという。

第3章「カルタゴ物語」
「カルタゴ(Carthage)の故地は、北アフリカ・チュニジア共和国の首都チュニスから
北方約15キロメートルにある。そのゆかりや地の中心、ビュルサ(Byrsa)の丘に立つと一気に、空と海の碧さが目に飛び込んでくる」(p.68より)

とあるようにカルタゴはレバノンと言うよりも、アフリカ北部にある地方の一つである。その地とレバノン杉の関連性について紀元前にあった古代ローマ時代の出来事とともに紐解いているのが本章である。

第4章「レバノン杉と日本」
レバノン杉はレバノンやその近辺の国々にしか育っていないわけではない。日本でも高知や東京を中心に存在するのだが、そのルーツも明治時代からあるのだという。本章ではそのことについて取り上げている。

第5章「相似た運命」
レバノン杉と相似た運命にある杉が存在するのだという。本章ではその中でも「秋田杉」や「屋久杉」を引き合いに出して取り上げている。

第6章「よみがえれ!レバノン杉」
レバノン杉はレバノンをはじめ多くの国々に親しまれていたのだが、冒頭でもあったように絶滅の危機に瀕しているという。そのレバノン杉を絶滅の危機から救うためにとある日本人が救いの手を差し伸べ、なおかつ実際に行動をしたのだという。その日本人を基軸にどのように動いたのか、そのことについて取り上げている。

第7章「緑の新時代へ」
本章では緑がいかに重要であるか、そしてそれをはぐくませるためにはどうしたらよいのか、良し悪し両方の事例とともに取り上げている。悪い方の事例としてはイースター島が挙げられているのだが、そのイースター島は「緑を全滅させた島」と言われているのだと言う。

レバノン杉もまたほかの木々と同じく地球温暖化や乱伐によって危機にさらされているのだが、なぜレバノン杉をフォーカスしたのか、それは著者が第1章にて実際にレバノン杉を見て「魅せられた」からに他ならないという。ほかの杉とは違った「レバノン杉」としての魅力とは何か、もちろん本章でも第1章を中心に取り上げられているが、もっとほかのレバノン杉を見て、写真にしたためてみると、さらにレバノン杉の魅力がわかるかもしれない。