回想のぬいぐるみ警部

表紙でも分かるとおり、ぬいぐるみを持っているのは女性かと思ったら男性だったことには驚いた。そもそもぬいぐるみや人形を持っているキャラクターというと女性(それも少女)のイメージが強かったので、そういった固定観念が崩れ去ってしまった。

で、ぬいぐるみ警部はぬいぐるみがある分かわいいと思っていたが、単にぬいぐるみを持っているだけで、それ以外は理知的で、推理も冴えている所を見ると、なんともシュールである。

そのシュールさは好き嫌いがあるように思えるのだが、そのシュールさをさらに引き立たせているのが、その警部は一つのぬいぐるみを好んでいるわけではなく、ぬいぐるみ全部をこよなく、と言うよりも病的に好んでいることから、美貌も兼ねて「残念なイケメン」と言う言葉がよく似合う警部である。

キャラクターはここまでにしておいて、その警部がぬいぐるみを抱えながら様々な事件を解決に導く、推理短編集である。事件も陰惨なものがあり、ほのぼのさはないものの、ミステリーとしては非常に興味深くつくられているので、作品とキャラクターとのギャップを楽しむことが出来る一冊と言える。