雇用大崩壊

もはや終身雇用は完全に崩壊したと言っても過言ではない。そのことから本書のタイトルにある「雇用大崩壊」が起こっているともいえるのだが、それだけではない。非正規雇用が増えてきており、サラリーマンになれず、不安定な人生を歩んでいく人々が増えてきているという。その状況はなぜできたのか、そしてこれから雇用はどうなっていくのか、本書は2009年に出版されたのだが、そもそも雇用崩壊の起源を追い、そして現状を鑑みるためには十分な一冊である。

第1章「雇用大崩壊がなぜ起こるのか」
そもそも雇用大崩壊が起こったのはバブルが崩壊するかしないかと言った時である。正社員の「終身雇用」が崩壊し、リストラが横行、さらに流動化した。さらに、雇用体系も派遣をはじめとした非正規雇用が生まれたことにより、非正規雇用が生まれ、増えていった。そしてリーマンショックの時に「派遣切り」が横行したという。

第2章「非正規雇用に明日はあるのか」
その「派遣切り」により、突発的に首を斬られてしまい、明日の仕事が無くなってしまったという人は少なくない。そういった方々のために「年越し派遣村」がつくられ、仕事のあっせんや炊き出しといったものがあった。しかしこのようなことがあっても、派遣市場は変わることはなかった。

第3章「正社員に忍び寄る恐怖」
正社員でも不安定な状況が生まれている。第1章で「リストラ」と書いたのだが、実際には直接解雇するというよりもむしろ「希望退職」を出し、自主的に退職に追い込むというような形のリストラである。
正社員への恐怖はリストラばかりではない。様々な「ハラスメント」による心の病と言ったものが挙げられる。

第4章「サラリーマンになれない若者たち」
若者の中には、サラリーマンにすらなれず、フリーターになったり、派遣労働者になったりする人が増えてきている。特に本書が出た少し後には新たな就職氷河期が出てきて、なかなか就職できない人が出てきているという。しかし最近では景気が良くなったこともあり、そうではなくなってきているのだが、これからまた氷河期と同じような状況になるとは限らない。

第5章「人材育成と研究開発」
人材育成は、多くの企業にて行われてきているのだが、果たして本当の意味で「育てている」のだろうか。また研究開発にしても、長期的な視野で研究を行ってきているのだろうかというと、どちらもそうとは限らない状況にあるという。

第6章「雇用回復のカギを考える」
雇用の状況から回復するためにはどうしたら良いのか、終身雇用の幻想を捨てること、そして整理解雇の規制を緩和すること、そしてそのことによって年齢差別や新卒一括採用を廃止し、フレキシブルな正規雇用を行うことを提言しているが、前者はできたとしても、後者をやろうとしなかったら雇用そのものが完全に崩壊する危険性がある。そのことから、前者を実行するためには後者も併せて実行することがすべてである。

雇用は崩壊したと言われているが、そのことがきっかけとなり「雇用とは何か?」「労働とは何か?」を一から見直すきっかけが生まれたとも見て取ることができる。そもそも今の雇用体系は大東亜戦争が終わった後からつくられたのだが、それがついに機能しにくくなり、変化を起こすきっかけだといえる。その変化はどのようになるのか、それはこれからの議論の中で出てくるのである。