偽恋愛小説家

恋愛小説というと書店に行けばあるのだが、「恋愛小説家」と標榜している方はあまり聞いたことがない。たいがいは「作家」「小説家」と言うような類で名乗っていると言った方が良いのかも知れない。

そこで本書の内容に入っていくのだが、本書は自称「恋愛小説家」が殺人事件を解き明かしていくというミステリー作品である。章ごとに分かれており、それぞれの章に「シンデレラ」「眠り姫」「人魚姫」「美女と野獣」という、誰もが知っている恋愛物語がなぞらえており、内容もそれに見合ったものにつくられている。

ただ、本書は単純に殺人事件を推理して解決していくわけではなく、各章で取り上げられている恋愛小説の新しい「解釈」はこうであることを明かす所が根幹にある。そのため、単純なミステリー作品と言うよりも、誰もが知っている恋愛物語の新たな切り口を学ぶことができると言う意味で、本書はミステリーとしても「異色」と言える一冊である。