一人でも部下がいる人のためのパワハラ入門

あらかじめ断っておくが、本書はパワハラの仕方を伝授している本ではなく、パワハラにならないよう、どのようなふるまいを行ったらよいのかを示している、いわゆる傾向と防止策を取り上げたものである。もしもあなたが先輩や上司になった時に、部下・後輩を持つのだが、その接し方ひとつで相手の気分を害するだけではなく、裁判沙汰にまでなってしまうようなことがある。その裁判沙汰を回避するための法律や事例などを取り上げている一方で問題社員との接し方も伝授している。

第1章「法律は社員の味方?~最後は判例がものをいう~」
法律というとけっこうアバウトに書かれていることが多く、法解釈などを兼ねているのが、「判例」である。特に裁判ごとになってくると法律の解釈よりも、過去の判例に倣うケースがほとんどである。本書はその判例や法解釈をもとに、残業や雇用に関するありとあらゆることを取り上げている。

第2章「会社を倒産に追い込むサービス残業~これからのキモは時間外労働管理~」
最近残業などの時間外労働の目が厳しくなってきている一方で、サービス残業をしている企業も少なくない。しかもその中には過度に行ったことにより、うつになったり、過労死・過労自殺に追い込まれたりする人もいる。もっと言うとサービス残業は損害賠償請求などにより、倒産に追い込まれるような事態に発展する火種にもなるという。本章はそのサービス残業と2010年4月に施行された改正労働基準法について取り上げている。

第3章「問題社員はこうやってダマらせる!~問題社員も納得の必須の法律知識~」
労働者の残業や不当な仕打ちだけではない。労働問題の中にはあまり取り上げられにくいものとして問題社員との接し方がいる。その問題社員と言っても組織のコミュニケーションに難があったり、会社のものを私用で扱ったり、様々なことを拒否するような社員がいるという。そういった社員に対してどのように納得させるか、本章ではそのことを伝授している。おそらく部下を持っているのであれば、法律のほかにも必要なものとして本章の内容は頭の片隅に入れておいた方が良いだろう。

第4章「いままで通りじゃ法律違反!~あなたの身にもふりかかる現代的トラブル事例~」
本書のタイトルには「パワハラ」とあるのだが、ほかにもセクハラやモラハラなどがあり、本章ではセクハラ、さらには育児や外国人に対するハラスメント、さらにはうつ病にかかった社員に対する接し方などを事例とともに取り上げている。

第5章「トラブらないために、知っておきたい10ヶ条」
トラブルになってしまうと自分だけではなく、会社としても損失を被ってしまう。そのことを考えると何が何でもトラブルは未然に防ぐ必要がある。本章ではその知っておきたいことを10ヶ条にまとめている。

第6章「知ってトクする職場のトラブルQ&A」
職場にはトラブルはつきものであるが、余計なトラブルを起こしてしまい、第5章と同じような「損失」を被ってしまう場合も少なくない。トラブルをいかにして防ぐかもあるが、円満に解決に持っていくことができるか、本章はそのトラブルを回避・解決する方法をQ&A方式で取り上げている。

本書は上司のための法律やパワハラ回避のための本であるが、これは経営者でも同じことが言える。何人もの社員を抱える会社の社長であれば中間管理職の方々のための対策本にもなり得る。そういったことを考えると、平社員よりも管理職以上の方々向けに読むべき入門書と言える。