歌舞伎町・ヤバさの真相

東京都新宿区歌舞伎町。私自身はあまりそこに行くことはなく、むしろあまり行きたくない気持ちである。その理由としてかつてテレビで歌舞伎町に関するドキュメンタリーを見て、「歌舞伎町=危険」というイメージを植え付けられているためである(もっとも私自身が東京嫌いであるが)。

歌舞伎町は危険であることはいろいろと見聞きしたのだが、なぜ・どのように危険なのか、ヤバいのかについて解き明かした本はなかなかない。本書はそのヤバい真相とは何かを解き明かしている。

第一章「ツツジと鉄砲」
「ツツジ」は、新宿区の花として指定されているところにあり、新宿区にある「職安通り」にツツジが多く栽培されるところにあるのだという。そして「鉄砲」は元々歌舞伎町の一部には「百人町」と呼ばれる部分があり、そこには「鉄砲百人組同心」という組屋敷があったことから、本章のタイトルにつけられている。新宿区に縁が遠いようで、かなり近いタイトルなのだが、本章ではその新宿区、そして歌舞伎町そのものの歴史を紐解いている。

第二章「怖さの淵源」
その歴史を紐解いていく中で歌舞伎町に「怖さ」が生まれたか、そこには暴力団やテキ屋、愚連隊と呼ばれる存在と戦後間もない混乱があった。その混乱には第五章で取り上げる「三国人」も密接に関係している。

第三章「娼婦と暴力」
歌舞伎町には性的産業と呼ばれるような店も少なくなかったという。現に歌舞伎町には様々な産業があるのだが、具体的にどのような店が存在したのか、そして暴力団とのかかわりとは何か、そのことを取り上げている。

第四章「怨念の伝承」
「怨念」は実際に生きている人にも存在するような感情なのだが、本章で取り上げている「怨念」はいわゆる「霊」による怨念のことを表している。そのことから本章では歌舞伎町を舞台とした伝承を取り上げている。

第五章「「三国人」と匿名性」
「三国人」について取り上げる必要があるのが2000年4月に当時東京都知事だった石原慎太郎がこれに関する発言で物議をかもしたことから始まる。そもそも「三国人(第三国人)」は、

「本来は「当事国以外の第三国の国民」一般を指すが、連合国軍占領下の日本においては、官公庁や国会を含む日本人およびGHQが、特に、日本に居留する旧外地(台湾・朝鮮など)に帰属する人々を指して用いた呼称」Wikipediaより)

とあり、戦後間もない時に生まれた言葉である。その三国人と呼ばれる人々、そしてその企業と歌舞伎町との関係について取り上げている。

第六章「やらずぼったくりの荒廃」
「ぼったくり」と言えば歌舞伎町でも様々な所で起こっているという。昨年か一昨年あたりにはそういった事件が度々起こったという。そのぼったくりと歌舞伎町との歴史を本章にて指摘している。

第七章「華人マフィアの風待ち港」
「華人マフィア」は簡単に言えば中国マフィアのことを表している。歌舞伎町には暴力団との関係もあるのだが、そういった海外のマフィアもまたシノギの温床であるという。しかしそういった温床が数多くあるにもかかわらず、抗争は存在したのか疑問に思ってしまう。本章は海外のマフィアを中心に取り上げている。

第八章「言葉なき兇暴」
先述の疑問だが、同胞殺人と呼ばれる事件は歌舞伎方でもいくつか存在するのだという。そういったことを含めた外国人から、あるいは外国人への事件や出来事を難しい漢字で「兇暴」と名付けている。

本書を見ると歌舞伎町は華やかな印象はあるのだが、その裏は何やら魑魅魍魎の感がぬぐえない。しかしそこには歴史が存在しており、歌舞伎町の裏から支えていたという意味合いも持っている。歌舞伎町は奥が深いというよりも「闇が深い」というのだが、それが著者には「ヤバい」と形容しているのかもしれない。