ランチのアッコちゃん

地味な派遣社員がプライベートな出来事で落ち込んでしまい、仕事も身が入らなくなり、さらには食欲も無くなってしまった。そこへ同じ女性ではあるものの、雲の上の存在として知られる通称「アッコさん」から指令を受けるようになる。

しかしその指令は型破りというか、なんとも「不思議」という言葉がよく似合うようなものだったのだが、その指令をこなしていくうちに、「アッコさん」の秘められた思いと願い、そして気遣いが表れていた。ある意味で突飛な展開のように見えるのだが、そこが面白いところであり、日常の延長線上に存在しているように見えており、なんとも見ているこっちが元気になってしまうような話である。

本書は表題作の他にも「夜食のアッコちゃん」、「夜の大捜査先生」「ゆとりのビアガーデン」が収録されている短編集である。

よく当ブログではミステリー小説を取り上げるのだが、本書のようにハートフルというか、日常的な小説も取り上げるのだが、感動的と言うよりも、元気になる小説はなんとも珍しい。異色と言えば異色なのだが、もしミステリー作品に飽きた、あるいは五月病になり、元気がないのであれば、本書を手に取ると良いと言える一冊である。