密室の神話

ミステリー作品、あるいは推理作品の中で出てくる殺人事件の多くは「密室殺人」と呼ばれるような類である。本書はその「密室殺人」を基軸にしたミステリー作品である。

本書の舞台は北海道にある架空の美術学校。その美術学校で起こった密室殺人は単純に部屋が密閉されているだけではなく、季節が冬であることから足跡も全く見つからない状況にある。そのことから密室に密室が重なって多重の「密室」となってしまい、事件そのものが迷宮入りになりそうなモノだったのだが、様々(本書の中には2ちゃんねるやTwitterみたいなやりとりも出てくる)なやりとり、検証を経て、真相が究明される。

その真相が究明されることによって犯人が特定されるのだが、特定された犯人がなぜ殺されたのかと言うのが見えなかった。その特定された犯人はおそらく「バレないだろう」と思ったのだが、結局の所トリックが全て見破られてしまい、混乱してしまい、分けの分からないようなことを語り出した所があり、動機が見えなくなってしまっているのかも知れない。完全に動機や真相が見えていない分、読後感のもやもや感はあるものの密室殺人からトリックを見つけ出す所は面白かった。