音楽を仕事にして -日本の聴衆に、この感動を伝えたい-

音楽を仕事にしている方は私の周りにも少なからずいる。そういった方々は音楽に情熱を燃やし、人々に感動をもたらしめている。「音楽」を仕事にしている人と言うと、プロの演奏者であったり、指揮者であったりというイメージを持たれるのだが、本書はそうではなく「音楽マネジメント」と呼ばれる仕事に従事している方の自伝である。

第一章「音楽マネジメントの世界へ―手探りの出発」
著者が音楽マネジメント業の世界に入ったのは、1971年。著者が39歳の頃である。それまでは金融機関で働いたのだが、あることからスカウトを受け「日本電波ニュース社」という会社に転職をした。当時の転職はあったものの、珍しかった。その職場では新規事業をつくり、音楽マネジメント事業に進出するきっかけをつくった。

第二章「感動を伝えるために―ジャパン・アーツの軌跡」
「音楽マネジメント業」とは何か、簡単に言うと音楽祭をつくったり、海外のプロ演奏者を招聘したり、日本のプロ演奏者をサポートしたりするなど様々である。感動を伝えるため、そして著者が掲げた「ジャパン・アーツ」を叶えるためにどのようなことをしたのかを綴っている。

第三章「僕の原点―苦しい時代に知った音楽の力」
著者が音楽の世界に入った理由、それは戦後間もない時の苦しい時代の中である歌を聴き、そのことで音楽の良さに触れたことにある。

第四章「僕たちの宝―アーティストとの出会い」
著者が出会った音楽家は国内外問わず数知れない。しかもその出会った方々の中にはそれぞれの思い出が詰まっている。本章ではその中でも著者が「宝」だと語った方々のエピソードを綴っている。

第五章「対談―黒田恭一/中藤泰雄」
本章は著者と音楽評論家の黒田恭一氏との対談である。音楽とは何か、音楽マネジメントとは何かなど音楽に関する様々なことを軸に話している。

私自身は音楽そのものを仕事にしたことはないのだが、吹奏楽部に6年間、オーケストラのサークルに4年間と10年間音楽とともに生きてきた。それがきっかけとなって多くの人と、それも印象に残る方々との出会い・別れもあった。そういった体験を重ねながら、感動を生み出し、伝えていった男の姿が本書にある。