踊り子と将棋指し

本書のタイトルを見たとき、てっきり浅草六区(ロック)での物語なのかなとイメージだったのだが、本書の舞台は神奈川県横須賀市である。本書の冒頭には「ペリー公園」がある。もっと言うと本書で取り上げられている時代は戦後間もないあたりと推測できる。そもそも賭けマージャンや賭け将棋、賭け囲碁などの賭博行為が禁止される前、「真剣師」と呼ばれる賭けを基調と知った将棋・囲碁・麻雀などを生業としていた人々がいた。

本書はある踊り子(ストリッパー)が男と動物と一緒に暮らしていたのだが、とある事情で大阪に渡り、旅巡業を始めたという。しかしその踊り子と同居した男はアルコール依存症だったのだが、その正体は「真剣師」だった。将棋でもって大金の動く賭け将棋の世界に巻き込まれ、将棋を舞台にした「真剣勝負」の連続が本書にあった。

ちなみにいうと、本書の著者は新聞記者であったのだが、アルコール依存症を受けた過去がある。本書に出てくる男もアルコール依存症があったのだが、その様子は当事者視点で描かれている。またおそらく将棋の対局場などに足しげく取材をしたのかもしれないのだが、将棋は戦法・棋譜に至るまでのところも事細かに描かれている。