否常識のススメ

私自身「常識」が嫌いである。当然法律やモラルといった「常識」は守るべきなのだが、それ以外の「常識」はその人自身にあり、その人の考えを押し付けるような言葉のようにしか思えないからである。現に私の周囲にもそういう言う人は何人かおり、そういった人から距離を置くようなこともあった。

私事はここまでにしておき、本書は社会の成長から成熟を迎えるための「否常識」を説いているが、よくある「非常識」ではなく、「常識」そのものを否定する考え方である。

第1章「成長期から成熟化期へ」
進化は量的なものの豊かさをもたらした。しかしすでに量の豊かさは達成しているとはいえ、今もなおそれを求めるところも多い。しかしそれと同時に質を求める人も増えてきており、質の深化が求められるようになった。そこに「成長」から「成熟」へのシフトが求められる要因となる。

第2章「「否常識」を持って今を疑え! フラジャイルな現実」
今はどのような状況なのか、そしてそれは真実なのか、常識なのか。そのことを「否常識」でもって今を疑い、状況の変化を起こすべきか、本章ではアベノミクスから、経済・社会の変化について取り上げている。

第3章「「知恵の時代」成熟化期のキーワード」
否常識でもって疑い、成熟化するためには「知恵」がどうしても必要になってくる。しかしその知恵を演出するためには、知識が必要であり、それを織り上げていくことが必要になってくる。

第4章「ソーシャル・マーケティングは「知恵のマーケティング」」
「ソーシャル」は簡単に言うとネット上のことを表しているが、その中でもSNSなどを介してビジネスを行うようなことが多いという。そのビジネスを行うためにはマーケティングが必要だが、そのマーケティングをするにあたり前章で取り上げた「知恵」が必要になってくる。本章では知恵でもってソーシャル・マーケティングを行うにはどうしたらよいかを伝授している。

第5章「「時代はスパイラル」スパイラルな進化と深化をつくりあげる」
時代は「スパイラル」のごとく繰り返される。そのスパイラルを「進化」、そして「深化」をしていくためにはどうすればよいか、本章では「エシカル・マーケティング」「インテリジェンス・マーケティング」など「理」「感」など三つの要素を上げながら、どのように深化・進化をしていけば良いかを提示している。

第6章「やってみる……事例研究」
第4・5章などのところでは「概要」を取り上げたのだが、本章ではそれ夫実践している会社をいくつか取り上げている。プラットフォーム事業から、ソーシャル・ネットワーク・サービス、ビッグデータの活用、シェアビジネス、一昨年「ビットコイン」で話題となった仮想通貨などがある。

第7章「「ホロ・デザイン」の時代」
本章で取り上げている「ホロ・デザイン」の「ホロ」は「ホログラム」なのかと言うと、実はそうではなく、生産するものそのもののデザインを表している。ちなみにそこから発展するものとして「マインドデザイン」や「システムデザイン」が挙げられる。前者の場合はコミュニケーションやストレス、そして後者の場合は倫理や社会と言ったものがある。
その両者の中核をなすのが「ホロ・デザイン」であるが、なぜそれが中心になってくるのか、本章にて論じている。

第8章「21世紀を「文化力」で乗り切る 文化のチ・カ・ラで世界を変えられるか?」
21世紀は「文化」が基軸となるという。グローバル化に伴い、文化や言語もなくなりつつある今だからでこそ独特の感性・知性などが備わった文化を作り上げていくことが必要になるという。

時代は変化するともに、経済も考え方も変化する。その変化の上で「常識」もまた変化すべきなのだが、「固定概念」のごとく鎮座し、成熟・変化の阻害になってしまう要因を作ってしまう。そのために「否常識」があり、疑い、そして本質を見極め、変化をすることによって成熟した社会をつくることができる。本書はそのヒントを示している。