ネット炎上の研究

最近ではネットで炎上するような投稿やニュースが出てきている。その炎上に乗じてモノを売っていくという「炎上商法」もあれば、その炎上を狙って目立とうとする人も出てきている。この「炎上」という言葉はブログや掲示板が生まれたあたりからと考えると17~18年前から生まれたのかもしれないが、具体的にいつ生まれたのかは定かではない。本書はそのネット炎上がなぜ起こるのか、誰が起こすのか、そしてそれを防ぐ手立てがあるのか、そのことについて分析をしている。

第1章「ソーシャルメディアと炎上―特徴と発生件数」
2年ほど前から「バカッター」と呼ばれる投稿が相次いでいる。どのような例なのかというと、ある学生がスーパーのアイスクリームを売っているアイスケースの中に入っている写真がTwitterで投稿され、大炎上した例を取り上げている。この顛末はすでに様々なメディアで取り上げられているためここでは割愛するが、こういった事例は前後で数多く存在する。ほかにも有名人のプライベートな情報を漏えいするような事例もあり、それが炎上する引き金にもなったこともある。ではこの発生件数はというと年々増えてきているのだが、一般人に限らず、有名人、法人関わらず炎上する事例もあるのだという。

第2章「炎上の分類・事例・パターン」
炎上というと、数年前まではニュースなどをブログや掲示板でセンセーショナルに扱う例があった。しかし現在では著名人や法人の発言、さらには一般人の悪質な投稿など多岐にわたる。またちょっとした炎上で、火に油を注ぐような対応を行うというような事例もある。「炎上」と一括りにしても発言・発生源・対処方法など様々であるが、本章ではその様々な例をいくつかのパターンにしている。このパターンの中には一昨年、当ブログで取り上げた「スマイリーキクチ事件」も取り上げられている。

第3章「炎上の社会的コスト」
炎上は発信する側も受け取る側、さらには取り上げる側などありとあらゆる面でリスクを伴う。法人であればそれに対するイメージ・ブランドを失墜させることにつながり、そのことで莫大な損失を被ってしまう、さらにはその炎上を殊更取り上げることによって情報発信の側もそれを萎縮するきっかけをつくってしまう。

第4章「炎上は誰が起こすのか」
実際に誰が炎上を起こすのか、それはいくつかの本でも取り上げているのだが、例えば承認欲求を求める人もいれば、炎上そのものを快楽としている人もいる。炎上目的で情報発信をする人もいれば、不用意な発言をしてしまうような人もいる。

第5章「炎上参加者はどれくらいいるのか」
炎上行動を起こすような人を「参加者」と定義している。その参加者はどれくらいいるのか、本章ではアンケート調査でもっと何人いるのか推定している。あくまで本章では「推定」としているため、実際にどれくらいいるのかは、炎上のパターンによって変わってくることは本章でも断りを入れている。

第6章「炎上の歴史的理解」
炎上はインターネット上だけの産物かと思う方も多いのだが、「炎上現象」自体はネットが日常生活で使われる以前から存在したという。ではどのような形の「炎上」だったのかというと、火災が起こるという物理的な「炎上」ではなく、書籍や新聞などで取り上げられたものが、一瞬にして噂となって広がっていく様を表している。それが世論の流れとなり、戦争や経済活動などの行動の引き金となっていった。それが急激に動くことを「炎上」となっていった。

第7章「サロン型SNS―受信と発信の分離」
サロン型SNSとはいったいどのようなものか、TwitterやFacebookとは違い一定の人にしか投稿が許されていない、いわゆる「クローズド」なSNSのことを表している。わかりやすいところでいうと「BLOGOS」などがそれにあたると言えよう。こういったことを行うことによって発信は良質なものになっていくのだが、その発信によっては炎上の火種になるようなこともある。しかしTwitterやFacebookとは違って炎上する危険性は少なくなるという。その要因について本書では取り上げている。

第8章「炎上への社会的対処」
炎上を防止するためには、それぞれのネットリテラシーを育てることしか手立てがない。その理由として政策対応を行おうにも様々な技術の進化がとなってきており、炎上を抑えるにも全くと言ってもいいほど追いつかない。もっと言うと日本国憲法で定められている「表現の自由」に抵触する可能性もある。そのことを考えると政府・自治体などマクロの観点から規制を行うにも難しい点があるという。

私自身もブログやSNSで情報発信をしているが、それが炎上になったことは何度かある。そのたびに自分自身の投稿に何かおかしいものがあったのか、あるいは本当に自分自身が伝えたい情報だったのかというのを分析しているが、なかなか核心的な原因は見つからない。私事はここまでにしておいて、炎上は特に今でいう所ではメディアでも大々的に取り上げられることが多い。そのこともあって本書が生まれたのかもしれないが、ではその炎上はどうしていけば良いのか、対策自体はこれは個々で行うしかないというほかないような印象だった。数千万、数億にも上るネットユーザーがいることを考えると、この答えに帰着するほかないのかもしれない。