日本が世界一「貧しい」国である件について

本書のタイトルを見るに、経済的には「貧しい」かと言うとそうじゃないのかもしれないが、心的な「貧しい」のであれば、その通りの部分もあるのかもしれない。本書もその中でも後者のことを表しているのかもしれない。ではなぜ心的に世界で一番貧しくなってしまったのか、その要因と対策を取り上げている。

1章「ニッポンはなぜ貧しくなったのか」
「日本は「豊か」だけど「貧しい」国」(p.23より)
とあるが、まさにその通りと言える。ものの豊かさは高度経済成長により、経済成長が続いたことによって金銭的にも、物質的も豊かになっていったのだが、その反面精神的な豊かさはないがしろになっていた。それが統計化されたのが生活満足度の調査があり、先進国と比べても低いということを著者は指摘している。

2章「ニッポン人の働き方はこんなにおかしい」
日本における働き方と海外における働き方とを比べると、日本の働き方には特異な部分は存在する。その中でも「滅私奉公」や「修練」といったような考え方が日本の働き方があり、それが「過労死」などの症状に陥ることもある。現在でこそ「ブラック企業」が社会的に言われるようになり、それに対する対策を講じている企業も少なくない。しかしそれでもなお「異常」と呼ばれるような風潮が続いていることを本章にて指摘している。

3章「グローバル人材ってなんだ?」
「グローバル化」と言われて久しいが、そのような時に「グローバル人材」をつくる企業は少なくない。しかしその育成方法は正しいのか、むしろそれが間違っているという。そもそも日本の教育はグローバルの中で人材を育てるための教育となっているのか、著者は疑問を呈している。

4章「文明未開の国―本当に「貧困」な日本社会」
著者に言わせると、日本は「文明開化」どころか「文明未開」なのだという。その要因として日本独特の「ムラ」社会であること、そしてそれを支配する「世間」や「空気」と呼ばれるようなものがあるといいう。

5章「ドメ思考で取り残される!世界と日本のこれまでとこれから」
「ドメ」は簡単に言うと「ドメスティック」の略であり、「内的(後で調べる)」という意味である。簡単に言えば日本は内向きの考え方・傾向にあり、そのことから変化に背を向けてしまい、世界的に取り残されてしまっていることを著者は指摘している。

6章「2020年を生き抜くために」
2020年というと、東京オリンピックの年であるのだが、そのような年に向けて何をしたら良いのか、著者は自分自身の力で海外に渡り、スキルを身につけながら、もがき苦しむことを提唱している。そして多様性を受け入れたり、専門知識を身につけたりするなども併せて提言している。

本書を見ると日本は世界的に取り残されており、これからも未来がないように思えてならない。そういうことを長らく海外から見て著者はそう思っていたのかもしれないが、もしも日本に良いところがあるのであればそれはどこにあるのかということを聞きたい。たぶん「無い」とバッサリと切り捨てるのかもしれないが。