金持ちは崖っぷちに住む

金持ちは崖っぷちかというとそうではない。もしかしたらかつて放映されていた「火曜サスペンス劇場(火サス)」のファンというイメージも出てしまう。というのは主役を多く務めた船越英一郎と片平なぎさが崖の上で解決のやり取りをしているシーンを連想してしまうからである。

妄想はここまでにしておいて、文豪をはじめとした人物や俗に「セレブ」と言われる方々はこぞって「崖っぷち」に住む傾向にあるという。そもそもなぜ崖っぷちなのか、そして現在ある崖っぷち住宅の姿について取り上げたのが本書である。

Ⅰ.「文豪が過ごした崖上と崖下の暮らし」
冒頭にも書いたように崖っぷちを好むのはお金持ちだけではなく、文豪たちもそうだったという。「華族」と呼ばれた人物、さらには森鴎外や永井荷風といった人物が崖の上に住んでいたという。その一方で樋口一葉はそういった華族たちの住む崖の下で暮らしていたという。

Ⅱ.「崖っぷちの心理と威厳」
そもそも崖の上に住むということは人よりも高いところに住むという。これは現在でいう所の都心のタワーマンションの高層階に住む人の心理とほど近い。何を言っているのかというと人の上にいるという「優越感」を持つことができるのだという。しかも崖の上となると、安定しないように見えて、がっちりと固定しており、それが強い印象を与えるのだという。

Ⅲ.「崖っぷちの住宅」
崖の上にある住宅は今もなお現存する所が多い。その中でも本章では長崎、神奈川など様々な崖の上にある旧邸宅を取り上げている。中には文豪から、家族、さらには皇族と呼ばれるような人物もいるという。

崖っぷちというと、性格も金銭的にも危機にあるように感じてしまうのだが、物理的に崖の上に住むとなると、崖の下に人がいることを見越し、優越感をもたらすような感触を持つのだという。そのことを踏まえても崖の上はある意味のロマンがあることを本書は示している。