企業スポーツの現状と展望

「企業スポーツ」というとあまり聞きなれないイメージがある。しかし、スポーツ選手の中でも企業に所属している選手がおり、そこの正社員として働く傍らで、プロスポーツ選手として活動している方もいる。有名どころではスキージャンプ界のレジェンドである葛西紀明氏がいる。葛西氏は北海道に本社ある住宅メーカー・土屋ホームに所属しており、そこでは所属スポーツ選手だけではなく、住宅販売の業務も行っているという。葛西氏のみならず、企業で働きながらプロスポーツを行っている人は少なくない。

しかし企業の経営状態によってその活動維持ができなくなるという現状もある。本書はその企業スポーツの現状と、その歴史、そしてこれからについて取り上げている。

第Ⅰ部.「企業スポーツの現在」
企業に所属しながらスポーツで活躍している人は少なくない。その中には正社員として働く傍らで、プロ・アマチュア問わずにスポーツに勤しむ方もいる。そのような方々・企業について取り上げるとともに、それを支えるスポーツメーカーも存在するのだが、その存在と現状についても取り上げている。

第Ⅱ部.「野球に見る企業スポーツの歴史」
本章では野球を中心に取り上げているが、よく知られているプロ野球ではなく、「社会人野球」と呼ばれるところが中心となる。社会人野球は全国津々浦々に存在しており、チームを構え、各地方の予選が行われ、東京ドームにて本戦が行われる「都市対抗野球大会」がある。その都市対抗野球の歴史を取り上げつつ、10数年前に生まれた「独立リーグ」なるものも紹介している。

第Ⅲ部「データから見える企業スポーツの実態」
様々なニュースを見ると、ある企業がスポーツ部を廃部したり、社会人スポーツから撤退したりするというような話を聞く。果たしてそれは正しい考え方なのか、そしてそもそもなぜ企業はスポーツ部をつくったり、プロスポーツの選手と契約したりするのか、広告目的の観点から統計データをもとに考察を行っている。

第Ⅳ部「研究者による考察」
企業スポーツは別に日本独特の文化ではない。海外でも会社がスポーツ部を持ったり、プロスポーツ選手を正社員として所属させたりするようなことはある。もちろんプロスポーツ選手の中にはスポンサー契約を行い活動する方もいるが、本章、もとい本章ではあくまで企業スポーツが中心であるので、ここではスポーツと企業、そしてスポーツ選手と企業の関係を取り上げているに過ぎない。

企業スポーツのことはネガティブな話題ばかりでなかなかその実態が見えなかった。本書は研究本ではあるが、その知られざる企業スポーツの実態を垣間見ることができる。本書を通じて企業スポーツはどのような変化を見せるのか、それは定かではない。