ハーバード大学は「音楽」で人を育てる──21世紀の教養を創るアメリカのリベラル・アーツ教育

ハーバード大学というと世界の大学でも最高峰の大学の一つであり、教養にしてもビジネスにしても最高峰のことを学ぶことができる場として知られているのだが、そこでは以外にも音楽教育が行われているのだという。音楽を通じて教養を身につけることをハーバード大学は狙いとしているのだが、なぜ音楽を学ぶことになったのか、そしてその教育はこれからの教養、及び教育にどのような影響をもたらすのか、本書はそのことについて取り上げている。

第1章「音楽<も>学ぶ―教養としての音楽教育」
音楽を学ぶ大学は音大だけではない。ハーバード大学をはじめスタンフォード、マサチューセッツ工科、ニューヨーク、コロンビアの各大学でも教養科目として音楽があるという。なぜ音楽の科目が必要なのか、そこには価値観や歴史、思想、質問のそれぞれの力を鍛える部分があるのだという。

第2章「音楽<を>学ぶ―大学でも専門家が育つ」
大学によっては音大ではなくとも「音楽学科」と呼ばれるような学科もあるという。私自身ももし機会があれば受けてみたいのだが、そもそもなぜそういった名門の大学に音楽学科があるのか、そしてどうして音楽の専門家を養成するのか、そのことについて取り上げている。

第3章「音楽を<広げる>―社会の中での大学院の新しい使命」
音楽を通じて、価値観を広げたり、音楽そのものの教養を広げたりするためには大学はどのようなことを行っているのか、本章ではそのことについて取り上げている。

第4章「音楽はいつから<知>の対象になったのか―音楽の教養教育の歴史」
有名大学が音楽の科目を持つようになり、音楽学科を設立し、音楽の専門家を養成するようになった。そこには音楽が<知>の対象になったのだが、そもそも音楽がなぜ<知>になり得るのか、本章ではその音楽そのもの、音楽の教育について教養の観点からの歴史を探っている。

第5章「音楽<で>学ぶ―21世紀、音楽の知をもっと生かそう」
21世紀は音楽を学ぶというよりも、音楽<で>学ぶことが必要になるという。その音楽を通じて、教養を深める、あるいは価値観をつくる、そして音楽を通じた「知」を身につけ、活用することがあるという。音楽にはその可能性を秘めているという。

私自身、今は離れているのだが、中学・高校・大学と音楽をやっていた。厳密に言うと中学・高校は吹奏楽、大学はオーケストラをやっていたのだが、それを通じて色々な学び・気付きを得た。しかし本書に出会うまでは音楽に関する「知」があることは知らなかった。そのことを考えると音楽にはありとあらゆる可能性を秘めていると言っても過言ではない。本書は大学における音楽の可能性を垣間見ることができる。