タックス・ヘイブン――逃げていく税金

今年の3月末から4月にかけて世界中で「パナマ文書」が話題となった。その文書を巡ってアメリカ・西欧・日本の富裕層や政治関係者の名前が次々と出てきて、「世界的なスキャンダル」と取り上げるメディアも出てきた。やがてほとぼりが冷めることとなったのだが、書店を回ってみると「パナマ文書」にまつわる本が次々と出てきており、中には「緊急出版」という形で取り上げられている。この「パナマ文書」も、本書にて取り上げる「タックス・ヘイブン」の氷山の一角であり、まだまだそういったものがあるのかもしれない。しかしなぜ「タックス・ヘイブン」が生まれたのか、そしてなぜそれが今でも蔓延っているのか、そのことについて取り上げている。

第1章「タックス・ヘイブンとは何か」
「タックス・ヘイブン」は簡単に言うと、

「「税金がない国や地域」、あるいは「税金がほとんどない国や地域」」(p.18より)

を指す。こういった国や地域は世界を探すと存在しており、それに移住したりする人や企業も存在するという。

第2章「逃げる富裕層」
日本をはじめとした世界中の富裕層の中には海外に移住して余生を送ったり、節税をしたりするようなこともあるという。人によってはシンガポールに移住する、モナコやスイスに移住する人もいるのだが、なぜその国に行くのか、またかつてあった「武富士事件」はどうして起こったのか、本章ではそのことについて言及している。

第3章「逃がす企業」
企業も租税対策として法人税の安い国に資金を移すと言ったことがあるという。その中でも「オウブンシャ・ホールディングス事件」という出版社の旺文社のホールディイングス会社が引き起こした事件、さらにはオリンパスやAIJの事件についても取り上げている。

第4章「黒い資金の洗浄装置」
いわゆる「マネー・ロンダリング(資金洗浄)」のことを指している。いったい何なんなのかというと、

「麻薬取引、脱税、粉飾決算などの犯罪によって得られた資金(汚れたお金)を、資金の出所をわからなくするために、架空または他人名義の金融機関口座などを利用して、転々と送金を繰り返したり、株や債券の購入や大口寄付などを行ったりします。」「SMBC日興証券」より)

とある。タックス・ヘイブンの一種として取り上げられているのだが、他のものとは違い多くの先進国で違法となっている。しかし富裕層の中には「マネー・ロンダリング」を行い、税金を回避しようとしている傾向にある。しかも中には事件に発展するようなこともあり、本章でも取り上げている。

第5章「連続して襲来する金融危機」
金融危機は「連続して」起こっているという。かつては世界恐慌、「石油ショック」「ブラックマンデー」「アジア通貨危機」「リーマンショック」「ソブリンリスク」、そしてイギリスのEU離脱によるものももしかしたら起こり得る事象の一つといえる。その金融危機はなぜ繰り返されるのか、そのことについて取り上げている。

第6章「対抗策の模索」
タックス・ヘイブンに対する対抗策は国ごとに行われているのかというと、行っている国もあれば、行われていない国も存在する。少なからずタックス・ヘイブンに関する対策を考えたり、実際に講じたりするところもあるのだが、行われている国でも課題は生じている。本章ではそのことについて取り上げている。

冒頭でも書いた通り「タックス・ヘイブン」はつい最近「パナマ文書」にて明らかになった。暴いたメディアは「世界最大のスキャンダル」と標榜しているのだが、これはあくまで氷山の一角に過ぎないように思えてならない。おそらく世の中に「資本主義」「お金」「税」などの概念が存在する限りそれはなくならないとも考える。本書を読んでそう思えてならなかった。