授業の出前、いらんかね。

「授業の出前」というのがあるという。そもそも「出前授業」の概念は様々な場で存在するのだが、本書で取り上げるものは長らく病院に入院している子どもたちに対して出前授業をしている方が自らの教育のあり方と歴史を綴っている。ちなみに本書で取り上げるのは「出前授業」だが、あくまで「院内教育」のことである。

第一章「病院訪問教育とはどんなものか」
「院内教育」とは何かというと文字通り病院の中にある院内学級があり、その学級の中で教師が出張してきて、授業を行うというものである。どのような教育かというと、長期で入院している小中学生を対象としているのだが、そもそもそういった学級はどの病院に存在するのかも著者が確認できている範囲で取り上げている。

第二章「病弱教育の歴史」
院内学級をつくり、そこで教育を行うことは「病弱教育」と呼ばれるのだが、そもそもそれはいつごろからできたものなのだろうか。古くは1889年に三重で行われたことが始まりにあり、その時は「脚気」と呼ばれる病気にかかっている子どもに対して行われたのだという。それから戦前、戦後と時代を経て病弱教育は行われているという。

第三章「出前教師の営業活動」
院内学級へ出前教師として派遣されるにはどうしたらよいかを取り上げたところであるのだが、そうなるためには地道な営業活動を行う必要があるという。どれくらい、そしてどのようにして営業活動を行ってきたのか著者自身の体験を綴っている。

第四章「教師にできること、できないこと」
出前授業を行う教師が院内学級でできることとは何か。その体験談として綴っているが、その中には運動に関すること、そして学校と院内学級の違いなど言及している。

第五章「仲間たち」
院内学級、ないしその教師は様々な支えがあって、そして仲間がいるからでこそ成り立っているという。その結論に至った理由として自らの体験を綴っている。

院内教育は本や漫画などで知ってはいたものの、詳細まではわからなかった。しかし著者自身が院内教育の現状などを自らの経験をもとに取り上げられており、なおかつエピソードもふんだんに盛り込まれていただけあり、院内教育の詳細をよく知ることができる一冊と言える。