大統領を殺す国 韓国

物々しいタイトルであるが強ち嘘ではない。その嘘ではない理由として前の大統領である李明博以前からずっと自殺をしたり、あるいは様々な嫌疑をかけられ逮捕されたりするなど、悲惨な人生を歩んでいる。「殺す」という言葉には物理的な意味もあるのだが、バッシングにより自殺に追い込まれる、名誉が傷つくというような意味合いも含まれている。

第1章「国民からソッポを向かれた「建国の父」李承晩」
韓国(正式には「大韓民国」)を建国した際の大統領は李承晩(イ・スンマン)であるが、元々三・一独立運動をはじめとした独立運動に参加したことから大統領となったのだが、大統領になってからは経済などの政治活動はほとんど振るわず、今日でも韓国では評価は低い。もっと言うと学生革命によって政権は倒され、最終的にアメリカに亡命した。

第2章「側近に暗殺された「開発独裁」朴正煕」
現在の大統領である朴槿恵の父である朴正煕(パク・チョンヒ)は、タイトルにある通り「開発独裁」として有名である一方で、「韓国近代化の父」としても有名である。しかし長らく政権を担い、強硬策を実行するなど、国民の不満も少なからず存在したために、腹心(しかも同郷で士官学校の同期生だった)に暗殺されるという結末だった。

第3章「軍部から担がれた「不正蓄財王」全斗煥」
朴正煕の次の大統領の在任時に、軍事クーデターを起こし、軍部から担がれた大統領として全斗煥(チョン・ドファン)がいる。このことを聞くと軍部の傀儡となったように見える。しかし完全に傀儡となったわけではなく、日米韓の三国の同盟を結び、日本からの資金援助を受けることで、政治・経済の安定化に成功した功績がある。しかしながら軍事政権だったことから民主的ではなく、国民からは投票による大統領選任を求めてデモが広がっていった。そのデモがやがて「光州事件」という韓国史上最悪の事件が発生した。
また全斗煥はタイトルにもあるように財閥からお金を巻き上げ、蓄財したことから指している。そのお金は全斗煥、そしてその一族のポケットマネーとして使われている疑いがあり、今日でも国会にて追及されているという。

第4章「直接選挙で選ばれた「半軍半民政権」盧泰愚」
民主化の声でようやく直接選挙が行われ、選ばれた大統領として盧泰愚(ノ・テウ)がいる。しかし完全に民主化されたわけではなく、「半軍半民」と呼ばれるいびつな形の政権だった。盧泰愚はソウルオリンピックを全うし、任期満了とともに退任となったが、そののち、全斗煥と同じく不正蓄財で追及されることとなった。

第5章「民主化政権へのクッションとなった「文民政権」金泳三」
金泳三(キム・ヨンサム)はポスト盧泰愚として担がれた候補で、後の大統領となる金大中を大統領選挙にて大差で破り大統領となった。しかし大統領になった時から韓国の経済は下り坂を迎える。日本でもバブル崩壊に伴う「失われた10年(ないし20年)」と呼ばれるような時代に突入し、1997年にアジア通貨危機が発生し、失脚となった。効果的な経済政策が行われず、なおかつ金泳三自身が「瞬間湯沸かし器」と形容されるほど短気な性格が災いし、今日でも韓国では評価が低いという。

第6章「野心が実を結んだ念願の「民主政権」金大中」
その金泳三のライバルであり、次の大統領となったのが金大中(キム・デジュン)である。2000年に「南北首脳会談」と実現し、南北朝鮮の統一に向けての第一歩を進めることができた人物として挙げられるが、大統領になるまでは二度の死刑判決を受けるなど辛酸を舐め続けた人物だった。その舐めた辛酸が実を結び、大統領となった。金泳三時代に起こったアジア通貨危機から脱却し、日本文化を取り入れ、さらには韓国の文化を輸出するようになり、経済の安定化に努めるようになっていった。しかし政権末期には息子のスキャンダルが噴出し、マスコミとの戦いとなっていった。

第7章「ネット市民に支持された「悲劇の大統領」廬武鉉」
金大中の後任の大統領となった廬武鉉(ノ・ムヒョン)は元々国民の知名度も低かった。しかしネット市民に支持され、国民に身近な大統領となるように努めたのだが、2004年に弾劾訴追をかけられ、職務を一時停止する羽目になったのだが、それがネット市民の心に火をつけ、支持基盤が出来上がるような形となった。しかし大統領退任後、スキャンダルが次々と取り上げられ、自宅の裏山にある崖から飛び降り自殺をし、逝去した。

第8章「追い詰められて暴発した「経済大統領」李明博」
金大中・廬武鉉と続いた政権から対立していた党から李明博(イ・ミョンバク)が新たに大統領として就任した。経済に強く精通していたことから「経済大統領」として担がれたのだが、まともな経済政策を出すことができず、国民の期待を裏切ることとなった。また李明博は韓国大統領として初めて日本の出身の大統領である(以前の大統領はいずれも日本統治時代含む朝鮮半島出身)。そのことから日本の考え方も持ち合わせ日本と良好な関係を築こうとしたのだが、それもうまくいかなかったという。

第9章「父親の血が後押しした「女性大統領」朴槿恵」
朴正煕の娘である朴槿恵が大統領になったのは2012年、現在も大統領を務めているのだが、「朴正煕の娘」であるが故の呪縛によって、外交・経済にてこじれる場面も多く見られている。現時点でスキャンダルなどの疑惑はないのだが、今までの大統領の傾向からしてスキャンダルが出る可能性は否めない。

第10章「韓国大統領はなぜ殺されるのか」
そもそもなぜ大統領が退任するとスキャンダルや疑惑が噴出し、失脚、最悪自殺まで追い込まれるようなことになるのか、そこには韓国にある「大統領制」であるが故の理由があるという。

私自身も、ニュースを常に見ていて不思議に思った。大統領が退任した後になぜスキャンダルが出てくるのか、そしてそれで大統領としての評価がガタ落ちになってしまうのか。その疑問が本書にて払拭されたといえる。