そして、何も残らない

アガサ・クリスティーの推理小説に「そして誰もいなくなった」という作品がある。その作品をもじって本書のタイトルになったのかもしれないが、そのもじった元の作品のストーリーとも重複するようなミステリー作品である。本書の表紙に女子高生があおむけに横になっている描写があり、なおかつエレキギターが横にあることを見ると、軽音楽部と見て取れる。

ちなみに本書は高校卒業したばかりの主人公が母校の中学校を訪れた。その中学校で、軽音楽部で青春を謳歌した思い出に浸るためかと思ったが、その実は「復讐」だった。その復讐の相手はその軽音部を廃部に追い込んだ教師であるが、その教師もまた一つの「ゲーム」を企画・実行をしたのである。そのゲームはまさに「ミステリー作品」ならではのもので、次々と進んでいくにあたり「何も残らない」「誰もいなくなった」という言葉が重くのしかかる。そういったことを物語った一冊である。