近代部落史-明治から現代まで

「部落差別」は書籍でも伝えられているのだが、メディアではそれほど多く報じられない。その理由として「差別」に関してメディアは敏感であり、それでいて拒否反応を示すことにより、タブー視されているからである。しかし部落差別を含め部落そのものの歴史はどのように形成づけられたのかという疑問が生じている。本書はその部落が形成され、差別の対象とされていったのか、そのことについて取り上げている。

第一章「近代国家の成立と再編される身分」
近代国家が成立したのが明治時代に入ってからのことであり、それまでは士農工商の身分が分かれていた。そのほかにも「エタ」「非人」と呼ばれる身分も存在し、それが近代国家にも違った形で伝わっていった。

第二章「帝国のなかの部落問題」
士農工商の身分が無くなり、大日本帝国の国家となっていったが、それと同時に「人種主義」なる思想も生まれてきたという。その思想とともにどのように差別が形成づけられていったのかが中心となる。

第三章「解放か融和か」
部落解放を求める声は存在するのだが、その起源はいつ頃からかというと「全国水平会」にまで遡る。そもそも「全国水平会」はいつごろできたのかというと、1922年のことである。そこから様々な水平社ができ、部落差別に関する反対運動も起こった。

第四章「「国民一体」と人種主義の相克」
それから大東亜戦争に至るまでの部落差別はどのようにつくられていったのか、そこには「国民一体」という言葉がヒントとしてある。

第五章「戦後から<いま>へ」
第三章にもある通り、戦前から部落解放のカタチはあったのだが、戦後になって「部落解放運動」と呼ばれる運動が出始めた。しかしながらメディアでは大きく取り上げられない代わりに、多岐にわたった運動が行われるようになった。現在もなおその運動は行われて続けているという。

部落差別は見ようとしてみないとなかなか見えてこない、それだけ普通ではよくわからない問題である。元々は江戸時代における身分差別の名残であるのだが、その「名残」は今もなお苦しめられ続けている人もいれば、それを利権にしていく人もいる。その歴史を知ることによって本当の「解決」へのヒントはあるのかというと、それは読む人によるのかもしれない。