百姓たちの水資源戦争―江戸時代の水争いを追う

環境問題を考えていくうえで行きつくところの一つとして「食糧戦争」と、もう一つは淡水を争う「水戦争」がある。特に水資源を巡っては海外の企業が諸外国の土地を買い占めるといったことが起こっており、日本でも同じように起こっている。

本書の話に移るのだが、こういった水戦争は江戸時代にも現にあったのだが、その水戦争は現在起こっている環境問題よりも農業における業務用水の確保における「水戦争」が起こっていたという。その水戦争はどこで、なぜ起こったのか、そしてそれが終息を迎えたのはいつか、そのことについて取り上げている。

第一部「水とともに生きる百姓たち―江戸時代の治水・用水の知恵から、水争いの実態まで」
そもそも「水戦争」の根源の一つとして日本における水田の確保、そして用水路の確保に伴い、米を生産し、年貢として納める必要があった。その米を生産する上で重要なものとしてあるのが「水」だった。その水を確保するために百姓たちが争ったのだという。なぜ百姓たちで争っていたのか、そして大名たちはどのように見ていたのか、その実態について史料をもとにして分析を行っている。

第二部「河内国での水資源戦争300年を追う―江戸初期から明治まで」
河内国は現在でいう所の「大阪」である。俗に「天下の台所」と呼ばれた所では江戸時代の前期から明治時代にかけて長きにわたって水戦争が起こったという。その河内国の中で起こった水資源を巡っての村々の対立について事細かに取り上げている。

「水戦争」は確かに江戸時代でも起こったのだが、冒頭でも述べたように環境問題ではなく、むしろ年貢と直結しているところでの争いだった。もちろんそのことが大名たちにどのような影響はあるのかは計り知れず、幕府もその行く末を見守ることもあったという。それだけ水資源の争いは重要なことであったことは本書で読んでよくわかる。