花や今宵の

花は不思議なものである。季節を物語るものもあれば、幻想的なものを醸し出すようなこともあり得る。その花の中で生まれる物語は一体どのようなものなのか。そのことを物語っている一冊である。

物語の舞台は東京ととある集落であるのだが、その共通する「花」とはいったい何なのか、そのことについて取り上げている。

幻想的な雰囲気を醸しているものの本書はミステリー小説である。ミステリー小説であるのだが、事件が起きるまでの描写が幻想的過ぎて、なかなか物語が見えてこなかったように思えてならない。

もちろん事件もどのようなトリックがあるのかを探しながら読んでいったのだが、その中でもミステリーならではの感覚がなく、むしろ物語がスッと過ぎてしまうような感じがしてならなかった。