をちこちさんとわたし


気難しい男と記憶を持たない女とのデコボコの物語であるものの、その物語は面白いように進んでいくような、見るも不思議な一冊と言える。

不思議であるがゆえに謎が謎を呼ぶのだが、読んでいて「良い意味で」わけがわからなくなる。もちろんストーリーがめちゃくちゃなわけではなく、むしろ整っているのだが、その整い方が「不思議」さを醸し出し、それが物語の面白さへとつながっていく。
文章も現代文よりも少し昔の古典と現代との間にあるようなもので、近いものでいえば幸田露伴の時代を少し新しくしたような文体とも言えるのかもしれない。

だんだんと読んでいくうちに現実感が失われファンタジーの要素も多くなっていくのだが、元々「不思議」な作品であるだけにファンタジーの要素が組まれても違和感がなくすんなりと入っていくことができるようになる。そういったことが本書の魅力を引き出してくれるとなると何回読んでも妙な面白さが出てくる一冊と言える。

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