カストロとフランコ―冷戦期外交の舞台裏

昨月11月25日にキューバの前最高指導者であり、チェ・ゲバラとともにキューバを革命に導いたフィデル・カストロが逝去した。長年にわたり最高指導者とし続けたことで多少の澱はあったものの、それでも現在のキューバをつくり上げた人物の一人として挙げられる。そのカストロについて取り上げているが、もう一人取り上げている人物として第二次世界大戦後、スペインで長年指導者としてあり続けた、あるいは独裁者としてあり続けたフランシスコ・フランコを挙げられている。その二人はどのような人物で、どのように比較されるのかを考察している。

第一章「対比列伝―正反対に見える二人の共通項」
2人にはどのような生い立ちがあり、なおかつ成長を遂げ、カストロは革命を、フランコは独裁者としての道を歩んでいったのかを取り上げつつ、共通項はどこにあるのか探っている。

第二章「形容矛盾―革命前後のキューバとカストロ」
元々フランコが指導者なるきっかけになったのがスペイン内戦であったのだが、その数年後にはゲバラとカストロらがキューバ革命を行い、現代のスペイン・キューバの基礎をつくり上げた。その2つの出来事には異なる点があり、その点を指摘している。

第三章「独立自尊―カストロ・キューバをめぐるスペインの独自外交」
カストロが最高指導者となってからの外交はどうなったのか、特に対スペイン外交がどうなっているのかを取り上げている。

第四章「遠交近攻―国際社会におけるキューバとスペイン」
キューバとスペインの外交のあり方はどのようなものだったのか、本章ではキューバのほかにスペインが行った外交との比較も併せて取り上げている。

第五章「大義名分―大義ある人々からプラグマティストへ」
元々フランコはスペインの中のガリシアと呼ばれる州で生まれ育った。そのためスペイン人とも呼ばれることもあれば「ガリシア人」と呼ばれることもあった。そのガリシア人の気質とは何か、大義とは何かを取り上げているのが本章である。

第六章「世代交代―ポスト・フランコ=カストロ時代」
キューバでは近年体制が変わっていったというフィデル・カストロから弟のラウル・カストロに最高指導者が禅譲され、スペインは民主化が進んでいった。その経緯について取り上げたのが本章である。

カストロの逝去によってキューバはどのように変わっていくのかは注視するほかないのだが、過去にカストロがどのようにして育ち、最高指導者としてどのような道を歩んでいったのかは検証する必要がある。その一材料として本書があると言っても過言ではない。