時を刻む湖――7万枚の地層に挑んだ科学者たち


私自身「湖」をあまり見たことがない。そもそも湖に面したところに住んでおらず、なおかつ旅行にすら行ったことがないためである。そう考えると湖はぜひ見てみたいのだが、その「湖」にもいろいろな種類がある。

中でも本書で取り上げる「湖」には地球の歴史そのものを表しており、「標準時計」の役割を持っているのだという。その奇跡の湖はどこにあるのか、どのような役割を担うのか、20年以上にわたる長い記憶を追っているのが本書である。

1.「奇跡の湖の発見」
「奇跡の湖」の正体は、なんと日本にある。福島県美浜町・若狭町の間にある三方五湖((みかたごこ))の一つである「水月湖(すいげつこ)」である。なぜ「水月湖」が「奇跡」なのか。元々湖は近くに河川があることがあるのだが、水月湖は近くに河川がなく、水深も深いために、毎年キレイに湖底の堆積物が溜まっていくという。その堆積物がミルフィーユのごとくキレイな形で年稿が作られているという。そのキレイさが「奇跡」と呼ばれている所以である。

2.「とても長い時間をはかる」
その水月湖に着目したのが1991年の話である。そこから年稿から時間を測るための調査が始まった。その調査の中で判明できる「時間」は「放射性炭素年代測定」と呼ばれるものであり、骨とう品や化石などの年代を測るために作られる測定器である。その測定器から測ることができた年代は約1万~5万年前にもなるのだという。

3.「より精密な「標準時計」を求めて」
世界的な標準時計はイギリスのビッグベンであるのだが、それ以上に緻密な時計を「水月湖」の年稿から求めることができるのだという。それを求めるために水月湖のボーリング調査を行い、堆積物を取り、どれぐらいの年代かを調べることで標準時計の役割を担うことができるのではと思ったという。

4.「世界中の時計を合わせる」
その調査の成果を論文にまとめ、学術雑誌「サイエンス誌」に発表したのは2012年のことである。この発表に伴い、「地質学」の観点から「時計」を合わせるための「基準」となっていった。

「時計を合わせる」「標準時計」というと私たちの生活の中である「時計」の基準を合わせるイメージだったが、そうではなく「地質学」「考古学」における年代測定の「基準」が新たなものになるための新発見、そして「奇跡の湖」なのだという。その湖を調べることによって新たな発見を見出すことができたことを考えるとまだまだ地球には新たな可能性を秘めていることを知ることのできる一冊である。

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