宮中からみる日本近代史

歴史は様々な角度から見ると異なる観点が出てくる。その観点が増えるほど、より複眼的に歴史を鑑みることができるようになる。特に最近の歴史に関しては史料などの記録も多くなっていることによってより細かく、多角的に分析しやすくなっている。

本書はその中でも天皇があらせられる場所、「宮中」の場からどのような歴史をたどっていったのか、そのことを取り上げている。

第一章「近代国家の建設と新しい宮中の姿―明治憲法体制下の宮中」
都が京都に移ってから1000年以上経ち、大政奉還・明治維新によって宮中は京都から東京に移るようになった。その東京の中での新しい「宮中」はどのような姿を見せたのか、その背景には維新の志士たちの姿もあれば、首相や軍人の姿も見え隠れする。

第二章「大正から昭和へ―元老西園寺による宮中管理」
明治末期から大正、昭和初期にかけて「宮中」はある人物が絶対的な権力を持っていた。その人物の名は西園寺公望である。西園寺は歴代で最も首相を務めた桂太郎と交互に内閣を支え、その後首相を選ぶ役職になり、大正5年に「元老」となり、大正・昭和両天皇の輔弼として支えるようになったためである。

第三章「政党政治の時代から軍部の台頭へ―宮中の苦悩」
昭和時代に入ってから政党政治が台頭するようになり、様々な内閣における戦いも始まっていった。その後、政党が乱立し、さらには軍部・文民との対立をも浮き彫りとなっていった。

第四章「戦争の時代―宮中新体制と西園寺の死」
やがて実験が軍部にもたれるようになり、宮中もそのあおりを受けるようになった。そのことについて本章にて取り上げている。

第五章「破滅への道―側近による戦争終結への努力」
東条体制になり、やがて大東亜戦争にまで発展していった。その発展していった中で宮中はどのような変化を見せていったのか、その中でフォーカスを当てている人物が最後の内大臣であった木戸幸一である。

第六章「敗戦後の国体危機―象徴天皇制へ」
大東亜戦争終結後は象徴天皇制に向けて大きく動いたことにあった。時には昭和天皇を守る、時には国体を維持するために奔走した宮中の人々がいた。

宮中も歴史の波にさらされ続けてきたところである。その「歴史」は宮中に対してどのように影響を受けてきたのかがよくわかる一冊と言えるのが本書である。